マリンバ奏者 出田りあさん 子どもが音楽に興味を持っても、私から教えることは絶対にしません

熊崎未奈 (2024年3月17日付 東京新聞朝刊)
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出田りあさん(ジェイ・ツー提供、ケイタ・クリストファーさん撮影)

家族のこと話そう

夫はバイオリニスト お互いの音を知る

 夫と、8歳の長女、5歳の長男と一緒にベルリンで暮らしています。夫は、バイオリニストでベルリン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスターの樫本大進です。お互い世界各国で公演があるので、夫とベルリンにいられるのは月に1週間くらいです。

 だからこそ、夫のコンサートを聴きに行く時間は大切にしています。2カ月に1回くらいですが、子どもをベビーシッターに預けて、公演が終わった後は音楽家仲間の家族の皆さんと食事にも行きます。夫も仕事が空いているときに、私のコンサートを聴きに来てくれます。

 世間からの評価ではなく、相手の仕事ぶりを自分の目で見て、耳で聴いておきたい。批評し合うわけではなく、今、どんな音を奏でているのか知っておきたいんです。音楽は彼の一部なので。例えば、毎朝一緒にごはんを食べている夫婦なら、今日は箸の進みが遅いな、食欲がないのかなと確認できる。それと同じで、演奏を聴くことで音楽家同士だからこそ意識し合える部分があると思っています。

「やってみる?」と言うのは簡単だけど

 子どもは2人ともベルリン生まれ、ベルリン育ちです。うらやましいほどドイツ語がぺらぺらで、「ママ、変な話し方だよ」と発音を注意されるほどです。

 子どもたちは音楽を聴くことが好きですね。夫が出るベルリン・フィルのライブ配信は毎月一緒に見ています。子どもたちはじっと聴いたり、歌ったり、楽器の当てっこをしたり、楽しんでいます。私のコンサートのリハーサルを見せることもあります。私が練習している曲を聴いて「この曲好き」と言って、歌ったり踊ったりしていますね。

 でも、音楽家になってほしいとは思っていなくて、子どもたちには音楽をさせないようにしていたんです。「好きならやってみる?」と言うのは簡単だけど、音楽の道に行くということは、親としてはとても大きな責任が生じる。いずれ子どもたちのプレッシャーにもなる。中途半端にやらせると子どもが苦しむことになると思うからです。

 だけど、やっぱり音楽には興味が湧いてくるみたいで、娘は今、ピアノを習っています。私から教えることは絶対にしないようにしています。こうしたらうまくなるのにというのが分かっていると、早回りをして言ってしまいそうになるので。何か聞かれても、私はいまだに「ピアノの楽譜はあんまり読めない」ということで貫き通しています。マリンバもピアノも結局、同じ五線譜だと娘が気付くときはすぐ来ると思いますが。

 でも、子どもたちが「本気で音楽をやりたい」と言ったときは反対せずに応援します。子どもとは一人の人間として対等に向き合いたい。親の言うことが絶対正しいのではなく、あなたがどうしたいか考えてと伝えていきたいと思っています。

出田りあ(いでた・りあ)

 1982年、ウィーン生まれ。2歳から熊本県に住む。6歳でマリンバを始め、18歳で渡仏。2003年、パリ国際マリンバコンクールで1位に。世界各地のオーケストラと共演を重ね、音楽ジャンルを問わず活躍する。今月25日に自身初のアルバムを配信リリースし、同日東京にて「アルバムリリース記念・ライブ配信コンサート」を行う。

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