水難事故が多いのは午後2時台、年齢は7歳と14歳 「海のそなえプロジェクト」が調査 繰り返さないために検証と共有を

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海や川などの自然環境で安全に遊ぶためには、ライフジャケットなど命を守るためのアイテムが欠かせない=いずれも東京都港区で(池田まみ撮影)

 毎夏、繰り返される水辺の事故。同じような水難事故を防ぐためには検証・分析と情報共有が必要だとして「日本財団 海のそなえプロジェクト」が調査を実施し、事故が起こりやすい状況への注意を呼びかけた。

溺水事故の死者数 30年ほど横ばい 

 「子どもの溺水事故数のピークは7歳と14歳にあり、7~8月に集中している」「(24歳までの若年世代の)水難事故の発生は午後2時台に多い」「溺れの原因のうち、自然要因は離岸流と風、個人要因は泳力不足、疲労、パニックの順に多い」

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水難事故が多く発生する時間帯について説明する日本財団海洋事業部常務理事の海野光行さん(右)

 6月に行われた同プロジェクト主催のシンポジウムで、日本財団海洋事業部常務理事の海野光行さんが、次々にデータを示した。

グラフ:溺水の年齢別発生状況

子どもの溺水事故の年齢別発生状況(消費者庁 ※データは厚生労働省)=出典:日本財団 海のそなえプロジェクト

グラフ:溺水の発生時期

子どもの溺水事故の発生時期(消費者庁 ※データは厚生労働省)=出典:日本財団 海のそなえプロジェクト

 登壇した日本ライフセービング協会の理事で救助救命本部長を務める石川仁憲さんは、事故の多い年齢について「7歳は親から離れて自由な活動をし始め、14歳は友達同士で行動するようになる時期。そうした変化が関係しているのでは」と指摘。午後2時に事故が多いのは「昼にお酒を飲んだ若者が再び海に入る時間」という海野さんの説明を受け、石川さんは「気の緩みに加え、風の向きが変わって海が荒れてくる一番難しい時間帯が午後の2~3時」と解説した。

グラフ:レスキューの時刻

出典:日本財団 海のそなえプロジェクト

 厚生労働省によると、年間の交通事故による死者数はこの30年ほどで約4分の1に減ったが、屋外の溺水事故の死者数はほぼ横ばい。プロジェクトは「交通事故のように、全国の水辺の溺れ事故のデータベース化を図り、対策につなげること」を目的とする。

グラフ:交通事故による死者数

出典:日本財団 海のそなえプロジェクト

グラフ:溺死による死者数

出典:日本財団 海のそなえプロジェクト

緊急時の対処「本当に正しいか検証を」

 この日のシンポジウムで、石川さんは(岸から沖に向かって流れる)離岸流について「よく言われるように、流れに対して横に泳いで逃れる対処法は正しいが、一番大事なのはパニックにならないこと。ある程度、沖へ行くと再び陸に向かって流れるので、それに乗って戻ってくればいい」と話した。

 日本水難救済会理事長の遠山純司さんは「溺れたら『(上を向いて水面に)浮いて待て』と教育の場で言われているが、波や流れのある海や川といった自然環境では通用しないことが実験で分かってきた」と説明。海野さんは「今、言われていることが本当に正しいかの検証も必要だ」と訴えた。

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溺れそうになったときの対処などについて話す日本ライフセービング協会理事の石川仁憲さん(右)、日本水難救済会理事長の遠山純司さん

 子どもを水の事故で亡くした遺族・吉川優子さん(52)は「再発を防ぐためには、事故の状況が科学的に検証され、その情報が一般の人にも共有されることがとても大切」と話す。

 2012年7月に当時5歳だった長男・慎之介さんが、幼稚園のお泊まり保育の川遊びで流され、亡くなった。その後の裁判で、園の職員らが「これまで事故がなかったから大丈夫」とリスクを検討せず、認識もしていなかったことが明らかになった。「似たような事故を繰り返さないために、保育や教育の現場に携わる人への研修が必要だ」

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保育・教育現場での研修の必要性を訴える吉川優子さん

水難事故防止教育 6割以上の教員が「教えるのは難しい」

 水難事故防止には、子どもへの安全教育が欠かせないが、同プロジェクトが5月に実施した小中学校教員2060人へのインターネット調査では、水泳授業そのものや命を守る教育について、小学校教員が抱える課題が浮かび上がった。

 水泳授業を「クラス担任が担当している」と答えた小学校教員は89%だったが、「水泳授業の不安」として63%が「安全に関すること」を挙げた。また、5割以上の小学校教員が、水泳授業中に子どもたちが自由に遊ぶ「自由時間」を取り入れていた。海野さんは「自由時間は不規則な動きや想定外の行動が多いので、けがや事故につながる可能性が高い」と指摘する。

 小学校での水難事故防止教育については、6割以上の教員が「教員が教えるのは難しい」と回答。外部委託を「検討したい」「検討している」との回答は4割だった。同プロジェクトは「小学校での安全教育はクラス担任が担うことが多いが、教員自身は教えるのは困難だと感じている。スイミングスクールとの連携などが有効な手段になる」と分析する。

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