夏休み明けの学校生活が不安な子へ 「信頼できる人を思い浮かべて」大人はあなたの味方です 

大森雅弥 (2024年8月20日付 東京新聞朝刊)
 毎年この時期、学校の生活に戻ることへの不安などから心の不調を感じ、中には生きることがつらくなってしまう子が出てきます。つらさを少しでも和らげるにはどうすればいいのでしょうか。大湫(おおくて)病院(岐阜県瑞浪市)の児童精神科医で、『思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?』(日本評論社)などの著書がある関正樹さん(47)に聞きました。 

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つらいと言えず心身の不調に

-夏休みが終わる前後は心の調子を崩す子どもたちが多いそうですね。

 今まで元気だった子どもでも心の不調を来し始める時期です。具体的には、休み中、元気に遊んでいたのに元気がなくなって遊ばなくなったり、寝ていることが多くなったり、家族にもあまり話をしなくなったりします。そのほか、最初はおなかが痛い、頭が痛いなど、体の不調を訴える子どもも少なくありません。

 そうなるのは、学校に行きづらいと感じ始めても、子どもは「学校に行きたくない」とはなかなか言えないから。保護者や周りの大人たちは、「休み明けに元気に登校」するのが難しい子どもが少なくないことを認識して、休みの後半は子どもの心の健康状態に注意してほしいと思います。

-深刻な事態になるケースもありますか。

 前から学校の生活に悩んでいた子どもは、よりしんどい気持ちを抱えます。休みの間、棚上げにしてきた苦しさや不安のようなものを考えてしまい、死にたいという気持ちが湧く子も。自分の居場所がないと思ったり、自分が生きていることで人に迷惑をかけていると思ったり、いろんな気持ちが重なり合って、そう思い詰めてしまうのです。

 本当に学校に行けなくなると、将来、自分は何者にもなれないんじゃないかと不安になる子も少なくありません。でも、学校に行けなかった子のほとんどが、その後、社会とのつながりを回復したことは覚えておいてほしいです。

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児童精神科医の関正樹さん

誰なら頼れそう? 考えてみて

-子どもたちはつらさをどう和らげればいいでしょう。

 昔は学校に行かなくなったら友達と全て切れてしまいましたが、今は交流サイト(SNS)で人とつながれるようになりました。居場所があれば、それだけで自殺を食い止める一つの要素になります。

 ただ、居場所があっても、「やっぱりしんどい」気持ちが出てしまう。そういうときは、信頼できる誰かを見つけることがとても大事です。

 だから、少しだけ元気なうちに、自分が信頼できる人を思い出しておいてほしい。お父さん、お母さん、きょうだい、親戚や近所の人、学校の先生、友達。専門家であるスクールカウンセラー、心の相談窓口で対応してくれる大人でもいいのです。

-大人たちはどうしたらいいのでしょうか。

 子どもが苦しいと言い出したら、話をさえぎらずに聞いてあげてください。そして「それはつらいね。でも私たちはあなたの味方だよ」と伝えてほしいと思います。

 親は、期待したり感情的になったりと、親だからこその難しさがある。親が孤立することのないよう、専門家とつながり、一緒に考えながら試行錯誤していきましょう。

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