センバツ初出場!横浜清陵高校が示す部活像は?「自らどんな活動をするかを決める姿勢」

神谷円香 (2025年3月16日付 東京新聞朝刊)
写真

初出場する甲子園に向けて意気込む部員たち=いずれも横浜市南区の横浜清陵高校で

 部活動は「自治」する-。18日開幕の第97回選抜高校野球大会に初出場する神奈川県立横浜清陵高校(横浜市)は、部員自らどんな活動をするかを決める姿勢が評価され、戦力だけでなく困難な状況の克服などが加味される「21世紀枠」で選出された。私立の強豪校に比べれば環境が恵まれているとは言い難いが、創意工夫を重ねて着実に力をつけ、夢舞台への切符をつかんだ。21日の第1試合で広島商と対戦する。

月1回「自治会議」を開いて意見交換

写真

自治会議で発表と話し合いをする部員たち

 2月末にあった、月1回の自治会議。さまざまな係のリーダーを務める部員たちが、その月を振り返って課題などを挙げ、次の1カ月の目標を掲げた。

 内野のリーダーは、徹底する基本事項を確認し「声掛けは結論までしっかり言うように」と指摘。打撃リーダーは「実戦が多くなると打撃のフォームが崩れそうになる。刷り込みを」と注意を促した。

写真

補食を取りながらミーティングで意見を出し合う部員たち

 係は打撃や走塁、トレーニングといった野球のプレーに直結する内容に限らない。補食作りや部員の体重管理を担当する食事係は、25人の部員が集まる昼食時、体作りに必要な食事量を取れるよう、12分間集中して食べる「黙食」を導入し効果を上げた。プレー以外の話をする機会にして仲を深めるため、練習後に学年をまたいだ班での下校を発案したのは親睦係だ。

練習時のグラウンドはサッカー部と共用

写真

サッカー部と共有するグラウンドで打撃練習に励む選手たち

 トレーニング係のリーダーでもある2年の山本康太主将(17)は、チームに根付く自治の姿勢が認められ、21世紀枠に選ばれたことを喜びつつも「自分たちにとってはいつも通りのこと。やっていることには自信を持っている」。放課後はグラウンドを独占できず、サッカー部と一緒に使っているが、県立だから私立よりも練習環境が劣ると意識することは「まったくない。しないのが当たり前」と言い切る。

 「人数も少ないので、一人一人に責任感がある。時間配分や細かい指示を出すのは大切にやっている」。主力投手で、部の運営を担うマネジャーも兼ねる2年の内藤大維(だい)選手(17)はそう話す。昨秋の県大会ではベスト8に進出。ただ準々決勝は強豪・東海大相模に完敗し、部員たちは実力の差を痛感している。思いがけない形で初出場を決めたが、出場ではなく「甲子園で勝つ」を目標に掲げるチームに浮足だった雰囲気はない。

部活動とは、「自分たちのものだ」

写真

食事係が準備した補食をおかわりする部員たち

 野原慎太郎監督(42)は東海大相模の出身で、2000年春の選抜大会優勝メンバー。だが、控え投手で、登板する機会はなかった。最後の夏はメンバーから外れ、自身の高校野球人生は「劣等感で終わっている」という。

 家庭科教諭として20年に横浜清陵に赴任し、ここ数年は「部活動とは何か」を突き詰めて考えてきた。そして、部員たちに「自分たちのものだ」とはっきり伝える。練習内容も相談に乗るが、提案を出してもらうのが先だ。

 部活動の自治は野球部だけではなく、学校全体の取り組みに広がっている。野原監督は「『生徒はもっとできる』と思って接していれば、いろんなことができる」と信じている。

<神奈川県立横浜清陵高校> 1974年に前身の清水ケ丘高校が開校し、3年後、横浜国立大があった現在地(横浜市南区清水ケ丘)へ移転。大岡高校との再編統合、総合学科への変更をへて、2017年に単位制普通科の横浜清陵高校となる。野球部の甲子園出場は春夏通じて初で、神奈川県からの21世紀枠選出も初。現地での経費や応援に行く生徒の旅費などに充てるため、3月末まで学校応援サイト「yellz(エールズ)」で寄付を募っている。

元記事:東京新聞デジタル 2025年3月16日

2

なるほど!

0

グッときた

1

もやもや...

0

もっと
知りたい

すくすくボイス

この記事の感想をお聞かせください

0/1000文字まで

編集チームがチェックの上で公開します。内容によっては非公開としたり、一部を削除したり、明らかな誤字等を修正させていただくことがあります。
投稿内容は、東京すくすくや東京新聞など、中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ