俳優 神野三鈴さん 夫のピアニスト小曽根真さんとともに成長 どんな時も連絡を取り合って
会った瞬間「この人と結婚する」
父は証券業を営んでいて、事業に失敗したり、成功したりを繰り返していたので、子どもの頃は生活の浮き沈みが激しかったです。私が6歳ぐらいの時、家族で住んでいた立派なお屋敷を引き払って、知り合いの家の1間を借りて暮らさざるを得なくなったこともありました。
その時、母は「小さい部屋にいると、みんなの顔がいつも見られるからうれしいね」と話していました。裏では相当な苦労があったと思いますが、子どもの前ではそうした態度は見せなかったので、私は全く不幸だと感じませんでした。お金とか損得とか、そういう価値観で物事を考えずに育ってこられたのは母のおかげですね。
夫(ジャズピアニストの小曽根真さん)との出会いは、私が企画した阪神・淡路大震災のチャリティーイベントへの出演依頼がきっかけ。会った瞬間、「この人と結婚する」と思ったんです。全然、好みのタイプではなかったんです。ああ、なんでこの人なんだろうって。不思議ですよね。結婚したのは出会ってから3カ月後でした。
子どものようだった夫が「成長」
それからは戦いの毎日でした。夫は本当に努力していましたが、自分の音楽活動に納得できずにストレスをため、すごく荒れていました。私は彼はすごい才能を持っていると感じたので、自分の仕事を辞めてでも支えようと思いました。結婚してから母の介護も必要になり、夫と一緒に渡った米国と日本を行ったり来たりする生活。その間も年に1~2本、ほそぼそと舞台の仕事を頂いて何とか役者を続けましたが、30代はほとんど仕事ができませんでした。
本格的に仕事を始められたのは40代に入ってから。夫は結婚当初は自分のことしか考えない、子どものような人でしたが、一緒に生きていく中でどんどん成長し、信じられないほど素晴らしい人に変わってくれました。私の中で「育児」が終わったような気がして、自分の仕事に専念してみたくなったんです。「自分の才能を無駄にせず、もっと高みまでいこう」と夫に言い続けてきましたが、次は私の番だと思いました。
夫は今、私の仕事を一生懸命応援してくれています。素晴らしい演奏で刺激を与えてくれますし、せりふ合わせを手伝ってくれたり、ごみ出しや洗い物をしてくれたりと、ささいなことでも助けてくれます。互いに家を空けることが多い仕事ですが、時差があって昼夜が逆でも、必ず連絡を取り合っています。そんな日常こそが、わが家の時間。長く夫婦をやっていても、相手のことをちゃんと見て、ちゃんと聞くことが大事だと思います。
神野三鈴(かんの・みすず)
1966年生まれ、神奈川県出身。舞台を中心に、テレビドラマや映画にも多数出演。「マクベス」「組曲虐殺」の演技で第27回読売演劇大賞最優秀女優賞受賞。東京で9~27日、大阪で8月5~7日に上演される舞台「ダディ」では、中山優馬さん演じる主人公フランクリンの母親・ゾラ役として出演する。
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