赤ちゃんの寝かしつけ ご機嫌な時間帯をチェックして 夜泣きはすぐに抱っこの前に様子見を

加藤祥子、大野雄一郎 (2025年2月19日付 東京新聞朝刊)
 乳児期の子育ての悩みで多いのが「寝かしつけ」や「夜泣き」。保護者も寝不足になり、産後うつや育児ノイローゼにもつながりかねない。乳児の睡眠を改善するにはどうしたらいいのか。国際資格である「妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント」の三橋かなさん(37)=名古屋市=に聞いた。 
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保護者の相談にのる三橋かなさん=名古屋市中区の市子ども・子育て支援センターで

背中スイッチが入る絶望感

 「子どもが生後半年くらいのときは夜泣きが大変だった。長いときで1時間ほど泣かれて、ようやく寝た頃にはこっちが覚醒してしまい、寝不足に…」。1歳の長男を育てる愛知県一宮市の公務員、加藤慎也さん(33)は、こう語る。夜泣きで長男が起きたときには抱っこして懸命にあやして寝かせたが、ベッドに下ろすと泣き出す「背中スイッチ」が入ってしまうことも。「絶望感があった」と苦笑いする。

 三橋さん自身も、現在6歳の長男が乳児だった頃、同じ悩みを抱え、自分も眠れない日々が続いた。こういった声は多く、医薬品卸のバイタルネット(仙台市)による2024年の調査でも、子どもが生まれてから2年間の育児の悩みでは、睡眠が1位に挙がった。

 三橋さんによると、改善の鍵になるのは日中の活動時間と昼寝のタイミング。乳児は一日のうち何度も睡眠と活動を繰り返すが、月齢によって機嫌良く起きていられる時間が違う。例えば、個人差もあるが、6カ月なら2時間~2時間半ほど。この時間を大幅にすぎると興奮状態になり、眠れなくなったり、寝てもすぐに起きてしまったりする。「機嫌のいい時間内に寝かせるよう心がけて」と助言する。

表:乳幼児が機嫌良く過ごせる時間

余裕があれば3分ほど様子見

 環境も大切になる。乳児は大人より体温が高いため、大人が少し肌寒いと感じる室温20~22度ほどで寝かすことを勧める。さらに、寝ている間は、温度のほか、光や音などを変化させないことが、目覚めた時の混乱を少なくさせるポイントだという。

 夜泣きへの対応では、「安全な環境ならすぐに抱き上げずに、余裕があれば3分ほど様子を見て」と話す。寝言と同様に泣いているだけの可能性もあり「抱くことで起こしてしまうこともある」と指摘する。自分で眠れるように、様子見の後は「ここにいるよ」「大丈夫だよ」との声かけから。その次に、子どもの胸などを軽くトントンし、それでも寝られなければ抱っこや授乳に移るのがいい。

 「背中スイッチ」に対しては、「寝入ってから15~20分後に寝床に下ろすといい」。深い眠りに入るタイミングだからだ。さらに、自分で眠る力をつけるためには、抱っこで寝入る前に、寝床に寝っ転がらせて保護者が見守る方法も提案する。ただ「つらかったら、我慢せず産後ケアなど周りに頼って」とも呼びかける。

寝床の安全性も気を付けて

 寝かしつけ方の見直しに加え、寝床の安全にも注意したい。三橋さんによると、保護者と同じ部屋で、ベビーベッドを使い寝床を分ける方法が良い。「もし別室にするなら、様子を見るためのカメラやモニターを利用して」と助言する。

 マットレスは硬いものを使用し、ベビーベッドの枠との間に2センチ以上の隙間を作らないようにする。鼻が挟まり窒息につながる危険性があるためだ。さらに、1歳未満は、家庭では枕や掛け布団を含め、ベッドの中には何も入れないようにするのが安全だという。寒さが心配な場合、ベスト状の着る布団「乳児用スリーパー」の着用を勧める。

 寝かせる際は、うつぶせでなく、あおむけに。こども家庭庁も、あおむけの方が乳幼児突然死症候群(SIDS)を発症する可能性が低いと啓発している。

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