乳幼児のショッピングカート転落に注意 ベルト締めても抜け出し…頭部損傷や骨折の重症事例も

(2023年1月27日付 東京新聞朝刊)
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生後10カ月の男児が転落した時の状況を再現したもの(男児を支える男性は事故時はいない)。男児の保護者が撮影、事故防止に生かしたいと提供した=一部画像処理

 スーパーなどで子どもを乗せて移動できるショッピングカートから乳幼児が転落、転倒し、けがをする事故が起きている。適切にベルトを着けていても、子どもが抜け出して落ちてしまうケースも。けがをする場所は頭部が多く、重傷のリスクもあるため、使う時は子どもから目を離さないなど十分注意したい。

10カ月の子 手の力で立ち上がり…

 東京都内のスーパーで昨夏、生後10カ月の男児が乳幼児用のショッピングカート(ベビーカート)から転落した。使われていたのはベビーカー型で、子どもを前の座席に、後方にかごをのせる。母親(42)がフードコートで4歳の娘をテーブル席に座らせ、男児を乗せたカートをそのテーブルに横付けし、注文のため席を離れた間のことだった。

 防犯カメラの映像によると、おもちゃで遊ぶ姉の手元をのぞきこもうとした男児が、身を乗り出して横のテーブルに手をついて立ち上がった。と同時に、足で押されたカートがテーブルから離れたために、バランスを崩して後頭部から転落していた。男児は「ギャーッ」と泣き叫んだが、まもなく泣きやんだ。傷やこぶ、嘔吐(おうと)もなかったため、病院には行かずに帰宅した。

5日後に判明 頭蓋骨が折れていた

 しかし5日後、頭部の左側がブヨブヨしているのに気付き、脳神経外科を受診。頭蓋骨が3カ所折れており、ブヨブヨは骨折に由来した出血だった。当時のCT画像を検討した小児脳神経外科医の藤原一枝さんは「骨折の程度が激しく、一歩間違えば硬膜外出血で手術になっていた」と指摘する。幸い後遺症はなかったが、母親は「目を離さなければよかった」と悔やむ。

 母親はカートを使い慣れており、子どものおなか周りのベルトも締めていた。しかし、ちょうどつかまり立ちができるようになってきていた男児はこの日、腕の力で踏ん張って立ち上がり、カートから抜け出してしまった。

 藤原さんは「この時期の子どもは成長が著しく、昨日までしなかった動きをすることもある。ショッピングカートは、ベルトをしていても子どもが立ったり身を乗り出したりすることもあり、保護者の注意が必要」と呼びかける。また「メーカー側もより安全性を高めるための検討が必要だ」と求める。

図解 乳幼児用ショッピングカートの事故防止のための注意点

店舗内の事故 けがは1歳児が最多

 国民生活センターが2011年4月~2016年10月に把握したスーパーなど店舗内での事故は295件。うち3分の1の108件が、ショッピングカートによる6歳以下の子どもの事故だった。その内訳は、転落が69件(63.9%)、転倒が18件(16.7%)となっている。

 かごと座席が一体化したショッピングカートに加え、近年は、より低年齢の生後2カ月くらいから3歳未満の子が乗れるベビーカートも普及。けがをした子の年齢も1歳が35件と最多で、2歳31件、3歳19件と続く。0歳も5件あった。

高さ60cmなら高い確率で頭部損傷

 けがの程度は「擦過傷・挫傷・打撲傷」が87件と多いが、骨折(5件)や頭蓋内損傷(1件)など、重症事例も。けがの部位は首より上の「頭」に集中しており、91件(84.3%)だった。

 乳幼児が頭を打つことの危険性を訴える「赤ちゃんを転ばせないで!!」(三省堂書店)の共著もある藤原さんは、「1歳以下の子だと、60センチ以上の高さから硬い床に転落して頭を打った場合には、高い確率で頭部損傷が生じる。直後に症状がなくても受診は必要」と強調。「腫れや出血など頭を打った症状が、今回のように数日たってから現れることがあることも知ってほしい」と話す。

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