子どもの長引くせきに注意 マイコプラズマ肺炎や百日ぜきの可能性も〈森戸やすみのメディカル・トーク〉

(2024年10月1日付 東京新聞朝刊)
イラスト

イラスト・菅原真紀

熱、せき… 診断の方法は?

 マイコプラズマ感染症をご存じですか? 今年はとても多いという話をニュースなどで知った方もいるでしょう。

 熱が出てせきが続き、感染者の約10%が肺炎になります。飛沫(ひまつ)・接触感染し、ワクチンがないので手洗いやマスク、3密の回避で予防するしかありません。マイコプラズマ肺炎は学齢期に多く、診断には鼻の奥やのどをぬぐう検査をして、抗菌薬などで治療します。

 今夏、私のクリニックではマイコプラズマ感染症も多かったのですが、百日ぜきの患者が相次ぎました。検査に出したところ、マイコプラズマでなく百日ぜきが陽性になったのです。

 百日ぜきは、あまり高くない熱でひどいせきが長期間続きます。ワクチン開始前の1940年代の死亡率はおよそ10%、大半が乳児でした。今はほぼ全ての乳幼児がワクチンを受けており、感染者は減りました。

 80年代に書かれた山内逸郎医師の本には「小児科医だったら、せきを聞いただけでそれとわかる」という記述があります。今はせきだけで診断できる小児科医はあまりいないと思います。乳児百日ぜきの診察経験がないからです。

 感染症は患者数が落ち着くと過去のものだと思われがちですが、マイコプラズマは数年ごとに増加、百日ぜきはワクチンの効果が減る学齢期に増えます。長引くせきのときには思い出してみてください。

森戸やすみ(もりと・やすみ)

 小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)勤務などを経験。「子育てはだいたいで大丈夫」(内外出版社)、共著に「やさしい予防接種BOOK」(同)など、医療と育児をつなぐ著書多数。「祖父母手帳」(日本文芸社)も監修。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝えます。

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