風邪でせきが長引くときは、加湿器を使って休養を〈森戸やすみのメディカル・トーク〉

(2024年11月19日付 東京新聞朝刊に一部加筆)

イラスト・川端乙大

 ウイルスや細菌といった病原微生物は、私たちの周囲にありふれて存在していますが、粘膜から体内にある程度の量が入ると、細胞内で増殖して感染症を起こします。

 鼻の粘膜にはフィルターの役割をする毛が生えていて、免疫機構が異物の侵入を防いだり、鼻水やくしゃみを出すことで病原微生物を追い出したりします。のどの粘膜でも、下の付け根の両側にある扁桃(へんとう)や鼻の奥にあるアデノイドが免疫活動をしていますが、感染を防げず咽頭炎や上気道炎、つまり風邪をひくことがあります。

 感染した細胞がきっかけとなり炎症が起こると鼻水やたんが出て、のどの粘膜にあるせき受容体が刺激されるとせきが出ます。垂れ込んだ鼻水やたんの刺激やのどの違和感から、反射ではなく意識的にせきを出すこともあります。どれも治る過程の一つですが、それ自体も不快ですね。

 ただの風邪でも3週間くらいせきが続くことがあり、特に乳幼児は長引きがちです。子どもは風邪を繰り返すので、治りかけに次の風邪をひいて、せきがひどくなることもあります。せき反射を抑える麻薬性鎮咳(ちんがい)薬は子どもには処方されませんし、非麻薬性でもすぐせきが止まることは期待できません。

 長引くせきの原因が風邪の場合は、暖かい部屋で加湿器を使って休養しましょう。口呼吸が多い子は、のどを痛めやすいので鼻水をかませるか吸引してあげます。1歳以上なら蜂蜜をなめるのも効果があります。

森戸やすみ(もりと・やすみ)

 小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)勤務などを経験。「子育てはだいたいで大丈夫」(内外出版社)、共著に「やさしい予防接種BOOK」(同)など、医療と育児をつなぐ著書多数。「祖父母手帳」(日本文芸社)も監修。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝えます。