〈パリ特派員の子育て通信〉 「美食の国」の給食メニューは?
「今日のデジュネ(昼食)何だった?ちゃんと食べた?」。幼稚園の給食を聞く私に、娘がめんどくさそうに答えました。「ラ・ビヤンド(定冠詞付きで肉の意味)。食べなかった」。見ると、歯の間に肉の切れ端が挟まっています。早くも反抗期なのでしょうか…。
今回は、「美食の国」とも言われるフランスの給食事情を紹介します。
娘が通うパリ市内の公立幼稚園では、週5回まで給食が食べられます。学期が始まるまでに「給食を食べる曜日」を事前登録するのですが、自宅に食べに帰ることにしたり、半日で終わる水曜日は給食をとらずに帰ることも可能です。「同級生と仲良くなるには同じ釜の飯を食った方がいい」と考え、娘は週5回食べさせることにしました。
公立幼稚園は無料ですが、給食費は家庭で負担します。パリ市の場合、金額は両親の所得に応じて1食あたり0.13ユーロ(約16円)から7ユーロ(約870円)まで10段階に分かれています。わが家は4.89ユーロ(約610円)。日本のサラリーマンの平均昼食代は500~600円との調査もありますから、ランチとしてはまあまあの値段かもしれません。
ただ、私の職場周辺で昼食をとると、一番安あがりなフランスパンのサンドイッチが1つ4.5ユーロ、中華料理店の弁当で5.8ユーロ、カフェに入ってフランス風の料理を食べると安くても10ユーロはかかります。そう考えれば、妥当な値段なのかもしれません。
さて、子どもたちはどんな昼食をとっているのでしょうか。新年の休み明け第1週のメニューを紹介します。
月曜日/レタスサラダ、ドレッシングはオリーブ油か酢を選択
ムサカ(ナスとひき肉、ホワイトソースを重ね焼くギリシャ料理)
チョコレートとクリームのデザート、パン
火曜日/ニンジンのラペ(千切りサラダ)、ローストビーフ、ジャガイモ
果物入りヨーグルト、パン
水曜日/スパゲティサラダ、鶏肉のアサツキソース、豆
生チーズ、果物盛り合わせ
木曜日/ビート(サトウダイコン)、洋がらしを使ったトンテキ、インゲン豆
チーズ、ガレット・デ・ロワ(パイの一種)
金曜日/ブロッコリーサラダ
魚のクリーム煮、米、ゴーダチーズ
果物入りヨーグルト、パン
木曜日のガレット・デ・ロワとは「王様の焼き菓子」との意味。キリスト教のお祭り「公現祭」を祝う1月6日に食べるパイの一種で、家族や仲間が集まって人数分に切り分けて食べます。普通のパイと違うのは、中に1個だけ3センチほどの陶器製の人形などが入っていることです。「フェーブ(空豆)」と言い、自分のパイの中に入っていた人が1年間幸運に恵まれるのだとか。幼稚園で出されたガレット・デ・ロワにも入っていたようで、娘が見事引き当てました。料理人がかぶるコック帽のフェーブです。翌朝登園すると、担任のマイリス先生が「ボンジュール、女王さま!」とひとこと。娘は照れて、私の後ろに隠れていました。
住んでいる区では、公立園の給食メニューは一律で、園内で調理されます。週8品は有機野菜が出され、水産資源保護などを意識した「持続可能な漁業」で取られた魚や、国産の畜産物も使われています。入園時に渡された資料には「給食は大切な教育の機会と考えている」と書いてありました。
食品廃棄物を減らすため、園では子どもたちによるメニューの投票もあります。娘がおいしくない食べ物を「バーク(おえっ)」と表現するようになったところを見ると、人気のないメニューの時、同級生たちが言っているのでしょう。メニューを見る限りはおいしそうですが、一度試食したいものです。
ただ、こうした充実した給食は、首都だからかもしれません。自治体によって財政力も異なり、パリ市ほど給食費の支援が充実していない街もあります。仏北部の小規模自治体では1食あたり一律3ユーロ。月額8000円以上となり、家庭の負担は軽くありません。国は貧困対策に力を入れているものの、仏メディアでは最近まで給食代が払えない家庭のことも取りあげられていました。
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【2019年2月26日 追記】ガレット・デ・ロワの説明で、「フェーブ(空豆)」が自分のパイの中に入っていた人が「その日のロワ(王様)です」と記述していましたが、フランスの行事としては、フェーブがあたった人は「皆の祝福を受け、1年間幸運に恵まれる」というのが一般的とのことで、表現を直しました。
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