<パリ特派員の子育て通信>「ピンボリ」がわが家にやってきた!

竹田佳彦 (2019年4月2日付 東京新聞朝刊)

パリ特派員の子育て通信

2017年9月からフランスに駐在する東京新聞パリ支局の竹田佳彦記者(40)が、現地の子育てについてつづります。随時掲載。
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家に来たピンボリと一緒に写真集を見る娘

 先日、わが家にかわいいお客さんがやってきました。「ピンボリ」というクマのぬいぐるみ。幼稚園のクラスのマスコットになっている、フランスの人気キャラクターです。毎週末、園児の家を泊まり歩いていて、ようやく順番が回ってきました。娘と一緒に露天市場(マルシェ)に行ったり、動物園でペンギンを見たりと、仲良く楽しい週末を過ごしました。

 実はこのピンボリ、キャラクターものに疎いわが家に、ちょっとした困惑をもたらしました。昨年九月、私が数日間の出張から帰宅すると、困り顔の妻に相談されました。「ピンボリって人が家に来るそうで日程調整しないといけないみたい。しかも2日間も」

 彼女が携帯電話で撮ってきた教室入り口の掲示板には「Pimboliをご自宅に迎えるため、都合のいい日を教えてください」と書かれたカレンダーが張られていました。「ピンボリって誰? 先生?」。そもそもフランスで家庭訪問なんて、聞いたこともありません。娘に「ピンボリ先生って知ってる?」と尋ねても頭をぶんぶんと振るだけです。

 週明け月曜日の朝、娘を先生に引き渡す時に「先生の名字ってピンボリですか?」と尋ねると、先生はキョトンとした顔。「掲示板に張られた紙のことなんですが…」と言うと、大笑いしながら「クラスのマスコットですよ」と教えてくれました。

 ピンボリが家庭にやってくるのは、日程表上は1泊2日ですが、金曜の夕方に連れ帰って月曜の朝に一緒に登園するため実質的に3泊4日です。一緒に過ごすことで愛着がわき、クラスメートの間の仲間意識を育てることも狙っているのでしょう。

家族と一緒に露天市場へ行き、季節の野菜を見るピンボリ

 週末の様子は絵日記帳に書き込みます。これまでピンボリが訪れた家庭の様子を見ると、公園で一緒に滑り台をしたり、絵本を読み聞かせたり。田舎の祖父母の家の暖炉の前で一緒にくつろいでいる写真もありました。たくさん貼られた写真から、各家庭の雰囲気がよく伝わってきました。

 フランスでは家庭状況まで教員が介入することはご法度だと聞きます。ピンボリの絵日記帳は、先生にとって家庭環境を把握する機会になっているのかもしれません。

 街中では外出時、ぬいぐるみや布製の人形を抱きかかえている子どもをよく見ます。「Doudou(ドゥドゥ)」と呼ばれる心の平穏を保つ存在で、入園の時も「置きDoudouを用意してください」と言われました。教室に置いておき、登園すると出迎えてくれる存在です。

 共働き率が高く小さい時から保育施設などに預けられることも珍しくないフランス。園でお気に入りのぬいぐるみをぎゅっと抱き締める子どもの姿はかわいいですが、幼少期から社会の荒波にもまれる大変さの表れでもあるのでしょう。

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