「こども家庭庁」法案は今国会で成立へ 支援関係者の反応は 「家庭重視に疑問」「予算や人は付くのか」
奥野斐 (2022年5月14日付 東京新聞朝刊)
「こども家庭庁」設置関連法案が13日に衆院内閣委員会で可決され、今国会で成立する見通しとなった。子育て支援などに携わる人からは、歓迎の一方で懸念の声も上がった。
増える虐待相談 大人の意識も変えて
「『こども』と付く省庁と法律ができることは、子どもを真ん中に置いて施策を進める第一歩。ようやくスタートラインに立てた」。NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事の高祖常子(こうそときこ)さんは力を込める。
児童虐待相談対応件数は年々増加し、2020年度は20万5000件を超えて過去最多を更新。高祖さんは子どもを1人の人間として尊重するよう、大人の意識を変える必要性も感じている。「子どもの権利の周知が大切。子どもの声が反映される体制を」と求める。
家庭に押し付けずに、地域で子育てを
コロナ禍で子どもを取り巻く状況は厳しさを増している。東京都三鷹市の子ども食堂では、月2回の弁当配布にコロナ前の1.5~2倍の150個を用意する。運営する加藤雅江・杏林大教授は「貧困だけでなく、家庭に居づらいとか、話を聞いてほしいと来る子が多い」と話す。
それだけに、法案で「家庭」の役割が重視される点が気掛かりという。「子どもの貧困の背景に親が働けないという課題があるように、子どもの問題は親の状況が解決していないから表れる。家庭に負担を押しつけず、地域で子育てする仕組みが必要」と強調する。
保育士不足 現場の実態を見てほしい
実効性をいぶかる向きもある。全国福祉保育労働組合の佐々木和子副委員長は「ただでさえ、保育士不足や子どもの安全を守る監査の規制緩和など逆行する動きがあるのに、予算や人はきちんと付くのか」と不安がぬぐえない。
人手不足に加え、コロナの感染防止対策もあり、保育士の業務は増えている。佐々木さんは「現場の実態を見て保育環境の改善に取り組んで」と注文した。
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