寺田静参院議員(前編) 子育ての苦労こそが、政治家としての価値になる〈ママパパ議連 本音で話しちゃう!〉

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子育てをしながらの議員活動について話す寺田静さん=東京・永田町の参院議員会館(由木直子撮影)

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夫婦で議員だから つらさを理解し合える

 参院議員の寺田静です。

 前回のコラムを担当された参院議員の矢田わか子さんから質問をいただきました。

 「ご夫婦で国会議員をされていますよね。ダブル国会議員の子育てって想像もつかないので、役割分担とか、何かお互いに気をつけていること、ご苦労などもお聞きしてみたいです」

 2003年から衆議院議員をしている夫と、3年前に初当選した私とで、家事育児は半々ぐらいの分担になっています。息子を夫(学さん)の落選中に授かりました。夫が主夫で私が働いていたという時期があったこともあり、共働きとなった今は夫婦共にそれぞれ向いていることを分担しながら、子育ても共同責任を担っています。掃除洗濯と食事後の食器洗いは夫、私は買い物と料理。小学校中学年になった息子に関しては、学校のことが主に私で、習い事のあれこれは夫、という形です。

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初当選した2019年の7月21日の夜

 カレンダーアプリで互いの予定と子どもの行事などを全て共有し、夜の会食を入れるときには念のため互いに相手に確認をとります。朝食をとりながら、その日の予定を互いに突き合わせて、子どもの帰宅時にどっちが在宅しているのか、習い事の送迎をどちらがやるのかを決めて、日々綱渡り。それでも、2人とも会社勤めという家庭から考えれば、いざとなれば事務所に連れていく、スタッフにちょっと見ていてもらう、ということもできる私たちは、はるかに恵まれていると思います。多くの家庭では、ちょっと誰かに見ていてもらう、それが叶わない。このことを忘れないようにしながら議員をやらなければといつも思っています。

 「議員同士で大変でしょう」と言われることもありますが、同じ仕事だからこそ互いの大変さが理解できる面もあります。議員歴の長い夫を見てきて、多数の人に囲まれているようでも実は政治家は孤独だと感じてきました。ですから、そういうつらさを互いにわかり合える私たちは、他の議員より恵まれているのかもしれません。夫が他の仕事をしているという場合がほとんどだろうと思われる他の女性議員は一体どうやってパートナーに理解してもらっているのだろう。どうやって子育てまでこなしているのだろうか。その方がずっと大変そう…。そう感じることもあります。

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 国会開会中は、平日は東京、週末は地元がメインの仕事場です。やりがいのある仕事ですし、女性議員が少ないために放置されていると感じる課題も多く、つい仕事に夢中になりがちですが、あと数年で親よりも友達のほうが大事になるであろう、今しかない子どもとの時間をちゃんととろうとも心がけています。

「家事育児は丸投げ」の政治家に違和感

 子どもが学校に上がったら、子どもとゆっくり過ごせるのは週末だけ。私の当選時に夫と相談し、月に4回ある週末のうち、1度は2人とも仕事を入れずに家族みんなで週末を過ごそうと決めています。その分、国会の会議が入らない平日に地元に戻って活動をすることで埋め合わせをするようにしています。

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子連れで地元秋田と東京の往復をすることも

 議員になる前から、「今の政治がどこかおかしいのは、家事、育児、介護を誰かに丸投げして政治という仕事に専念している男性ばかりが政治の場で意思決定をしているからなのだ」と感じてきました。私自身も、もし家事育児から離れて仕事ばかりをするようになったら、普通に生活している人たちが何に苦労しているのかがわからなくなる。特に、’’イヤイヤ期の子どもを病院に連れて行って薬をもらってくる’’というだけのことがどんなに気力体力を消耗するかといった子育て世代の日々の苦労がわからなくなったら、子育て世代の自分が議員でいる価値がないし、こうした苦労のわからないその他大勢の男性政治家と一緒になってしまうと思っています。

 両立をと踏ん張りつつも、専業主婦だった母の半分、いや3分の1も子どもにいろんなことをしてあげられていない(食事やおやつを手作りすることなど)と感じ、時折落ち込むことも。それでも、私には「議員という重い責任を負っている」という免罪符がどこかにある。だから、その分ちゃんと同世代のために、そして次の世代のために、子育てと仕事が両立できる社会の環境整備をしなくてはと思っています。

「子どもと仕事」両立を阻む日本の制度

 20代で子どもを産んだ友人は、就職先を探すのにも苦労をしています。「小さい子がいて残業もできない人を雇えない」

 大学院を出た友人も就職先探しに苦労します。「大学院まで出た人にやってもらう仕事がうちにはない」

 働くママ友が保育園の枠から漏れてしまい、苦渋の策で預かり保育のある公立幼稚園に相談に行くと、「うちは働くお母様のお子さんをお預かりするところではありません」と、耳を疑うような言葉が返ってくる。

 日本のさまざまな制度は、家庭には1人か2人、働いていない女性がいることを前提としてできていて、法律からPTAや町内会まで、まだまだそうなっていると感じます。結婚後も仕事を続ける女性が増え、共働き家庭が専業主婦家庭を上回るようになるという大きな社会構造の変化があったのにもかかわらず、日本は政策の転換がほとんどなされずにきました。

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 独身時代、働くことと子どもを持つことを同時にするイメージをどうしても描くことができなかった。そうであるからこそ、結婚を躊躇していた自分がいました。「子どももほしいけれど、仕事も続けたい」。ひとりの人間として、当たり前の感情だと思います。

母になった友人が「基本的人権がない」

 結婚後、住まいも遠く、コロナもあって何年も会っていなかった友人と、少し前に再会しました。2人の子どもも生まれ、幸せに暮らしているものと思っていた彼女の口から出たのは、「基本的人権がないの」という言葉でした。

 子どもが生まれた後も夫は出張に飛び回り、子育ては彼女がほぼ1人で担ってきたといいます。うつ寸前だったと思う、と。「今、子どもが2人とも幼稚園に通うようになり、少しだけゆとりができたけれども、ここまでの数年であまりに精神的なダメージを受けてしまい、また仕事の世界に飛び込む勇気が持てない。きっと仕事を始めても、年上の彼は私が家事と育児をするのが当たり前だと思っている。仕事と家庭の両立で今よりも自分が苦しくなるのはわかりきっているから、どうしても一歩を踏み出す気持ちになれない」と。

 「子どもを産んだらこんなにも男女が不平等だなんて。学校でどうして男女平等だって教えてたんだろう。こんなことなら、最初から不平等だって言ってもらってたほうがよかった」。10歳年下の彼女の言葉が重く胸に突き刺さりました。

 専業主婦の友人は、夫からママ友とランチやお茶をしているのを「お前は暇でいいよな」と言われて傷ついたといいます。

 子どもたちのために仕事を諦め、子育てと家事の合間を縫って、大切な我が子のために学校や習い事の評判などを友人たちと情報交換をしていても、「暇な女性たちが集まっておしゃべりしている」だけに男性たちには映っているのでしょう。「俺の稼いだ金で呑気なもんだ。そんな暇があるなら少しでも働いたらどうなんだ」と。

 家事・育児をしながら女性がそれなりに稼げてやりがいもある仕事に就くということがいかにハードルが高いのか、夫たちにはわからないからそんな言葉が出てくるし、その溝を埋めるには、夫婦の努力だけでは難しく、社会が変わらなくてはいけないと強く思います。

後編では、女性だけが育児か仕事かの選択を迫られる社会を変えたいという思いや、夫の選挙を通して気づいた男性のつらさをつづります。

寺田静(てらた・しずか)

 秋田選挙区、当選1回、無所属。1975年3月、秋田県横手市生まれ。秋田県立横手城南高校中退後、大検に合格、早稲田大学人間科学部卒。東京大学生産技術研究所、フリースクール等でのボランティアスタッフ、国会議員の公設秘書などを経て、2019年7月の参院選で初当選した。子どもや女性を取り巻く課題、教育の多様性、地方が抱える課題、環境問題や動物愛護などに取り組む。夫と小学生の長男と3人暮らし。

(担当・坂田奈央)

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