園児虐待「空白の3カ月」はなぜ生まれた? 裾野市の担当部署、市長に報告せず対応は後手後手に…

佐野周平 (2022年12月6日付 東京新聞朝刊)
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静岡県裾野市のさくら保育園(12月6日撮影)

 空白の3カ月-。静岡県裾野市の私立「さくら保育園」で1歳児担当の保育士だった3人が園児への暴行容疑で逮捕された事件で、通報により所管する市健康福祉部が端緒をつかんでから市長に報告するまでに3カ月かかった。その間、園は公表せず、通常通り保育を続けた。園児にカッターナイフを見せて脅すなど、15項目に上る不適切な行為を把握しながら、なぜ「空白の3カ月」が生まれたのか。

把握後にまず「保育環境の是正」

 健康福祉部が通報で端緒をつかんだのは8月17日。園長に事実関係の報告を求め、8日後には園からの報告で15項目の不適切な行為を把握した。

 部がまず着手したのは、保育環境の是正。加害者と目される3人の配置換えや処分、再発防止策の策定など、9月中ごろに初期対応が一段落した。石井敦部長らは「市長に報告となると、どう対応したかも当然必要になる。安全な保育環境も整い、この辺りが報告のタイミングだと思っていた」と振り返る。

園側の「再調査」で先延ばしに

 しかしその頃、逮捕された3人のうち1人の保育士の家族から、園の処分に不満を持っていると市に伝えられた。園長に事情を聴くと、「事実認定の部分でトラブルになっている。再調査をする」。15項目の事実関係が揺らぎ、市長への報告は先延ばしになった。

 ここから約2カ月。園から報告はなく、市がやったことは電話で園長に数回催促するぐらい。これ以上は待てないと、11月中旬になってようやく、再調査の結果を待たずに市長に報告することを決めた。

 部ナンバー2の鈴木則和・子育て支援監は「園側のペースに付き合ってしまった。遅くとも9月中ごろには市長に報告すべきだった」と漏らした。

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刑事告発したことを発表する裾野市の村田悠市長=同市役所で

 園側から11月29日に保護者説明会を開くと連絡があり、その前日の28日に市長に報告。2日後の30日に市として会見を開く方向で調整が始まった。しかし、29日に一部報道で問題が表面化し、30日の会見は「後出し」に映った。

市長「部の判断が誤っていた」

 結果的に市の初動は後手に回り、虐待行為の公表や保護者説明会の開催などが大幅に遅れた。村田悠(はるかぜ)市長は30日の会見で、「通報があった日には報告すべきだった。今回の部の判断は誤っていた」と述べた。

 村田市長は今月5日、報告が遅れた責任を問う形で石井部長を更迭する考えを示し、自身も給与2カ月分を全額返上する意向を明らかにした。村田市長は「部の動きは、納得もできないし、理解もできない。こんなの、すぐにでも警察に相談しなきゃいけないような話だ」と語気を強めた。

運営法人は園長を交代へ

 裾野市の私立「さくら保育園」で1歳児担当の保育士だった女3人が園児への暴行容疑で逮捕された事件で、同園を運営する社会福祉法人「桜愛会」は5日、桜井利彦園長を交代させる意向を発表した。

 桜愛会は「園児・保護者のために一日でも早く正常な保育環境を整えることを最重要項目と捉え、改革に取り組む」としている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年12月6日

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