打楽器奏者 藤井はるかさん 両親もアーティスト 同じ道を志した時、母は本気で怒った

佐橋大 (2024年5月19日付 東京新聞朝刊)
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藤井はるかさん(ジェイ・ツー提供)

家族のこと話そう

妹も打楽器奏者 デュオでも活動

 米国サンフランシスコに住んでいます。4歳下の妹の藤井里佳も打楽器奏者で、普段は別々に音楽活動していますが、打楽器姉妹デュオ「うたり」としても活動しています。母は、マリンバ奏者の藤井むつ子(75)。日本のマリンバ音楽を発展させた人です。父は建築家。一家全員がアーティストです。

 小さい頃は、母と同じ打楽器はやるもんかと思っていました。父は現場に出て、あまり家におらず、母も音楽活動で家を空けがち。いても、練習の邪魔をすると怒られる。当時の私にとって、パーカッションは母を私から取ってしまう存在でしたから。

 物心つくころからピアノを習っていて、音楽高校もピアノ科で入学しました。でも、ピアノはソロの要素の強い楽器。家に帰ると、母が皆とアンサンブルのリハーサルをして楽しそうにしている。私ももっと他の人と演奏したいという欲が出て、独学と、母の生徒さんの手ほどきでパーカッションに転向しました。

 転向を、母に最初に言ったとき、母は本気で怒っていました。「どのくらい大変か知らないでしょう」と。実際に同じ道を歩んでみて、母の苦労とすごさが分かり、尊敬の念が強くなりました。

母のためにつくられた作品を妹と 

 母と同じパーカッショニストとして、プレッシャーを感じることはありました。母はマリンバを極め、その才能を社会で求められている人。「はるかには、これがある」というものがないといけない、というプレッシャーは大学に入った頃からありました。

 まず、実践したのは、興味の湧いた楽器は他のだれよりもうまくなろうと。他のものにも興味が出てきたら、それもうまくなるまで続けようと。自分の好きなものを探し続けるうちに、どんどん引き出しが増え、他の音楽家の方から興味を持ってもらえた。世界的チェリストのヨーヨー・マさん率いる「シルクロード・アンサンブル」に関わることにもつながりました。今はマリンバからフレームドラム、茶わんまで音の出るものは何でも使って奏でます。

 私には10歳の娘がいますが、親になって、さらに母のありがたみが分かるようになりました。私がアーティストとしてキャリアを積んでいるのは、母や父がいてのことです。家族皆がやりたいことを、皆で全面的にサポートする。私が海外に行くと言っても、反対もせず「やりたいことをやったらいい」と言ってくれて、資金も必死にかき集めてくれました。家族をすごく誇りに思っています。

 妹と12年前に「うたり」を結成したのも、母がしてきたことを受け継ぎたいとの思いから。1970~80年代に母のために作られたけれど、あまり再演されていない素晴らしい作品が多くあり、もっと発信したいと始めました。6月の東京公演では現代、日米の作品を織り交ぜ、姉妹ならではの呼吸で面白いコンサートにしたいです。

藤井はるか(ふじい・はるか)

 1975年、埼玉県朝霞市出身。東京芸術大音楽学部打楽器科を卒業後、渡米。2010年からヨーヨー・マ率いるシルクロード・アンサンブルの正式メンバーとして公演に参加している。6月29日には5年ぶりの「うたり」の公演が東京都港区のベルサール虎ノ門である。詳細は「うたりデュオ オフィシャルウェブサイト」で案内している。

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