大人より7度高い「こども気温」 身長差で25度でも猛暑日なみに 発汗機能も不十分…熱中症に注意を

加藤祥子 (2025年7月9日付 東京新聞朝刊)
 季節外れの暑さに見舞われた6月が終わり、今後、最高気温が35度を超える猛暑日がさらに増えてくるとみられる。未就学児や小学生は、夏日(25度以上)や真夏日(30度以上)でも、猛暑日なみの気温にさらされていることがあるという。子どもの胸あたりの気温は、大人より7度ほど高いとの実験結果も。専門家は「子どもは大人と違う環境で過ごしていると、意識して」と呼び掛ける。
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子どもの胸の高さの方が7度高い気温になった検証実験のサーモグラフィー画像(サントリーとウェザーマップ提供)

地表面から照り返し 猛暑日は3倍に

 実験は、サントリー食品インターナショナル(東京)と、気象予報会社のウェザーマップ(東京)が2023年5月に実施。大人の胸ほどの高さの地上150センチ地点では、31.1度だったが、子どもの胸の高さにあたる80センチ地点では38.2度と、7度も差があった。地表面からの照り返しの影響を受けやすい点などが理由という。

 そんな環境にありながら、子どもは自分の状況をうまく言葉で説明できないことが多く、サントリーは、子どもの身長を基準にした気温を「こども気温」と命名。啓発を始めた。

 さらに、ウェザーマップは2024年5~9月の東京の気温を、日照時間などが実験時と同じ条件の日について「こども気温」に換算。7月は通常の猛暑日が計12日だったが、こども気温は計20日に上った。5カ月のこども気温での猛暑日数は通常の倍を超えた。

グラフ 通常気温と「こども気温」での猛暑日数の違い

汗腺は大人の6割 熱が放散されない

 救急専門医で、数多くの熱中症の事例に対応してきた医療法人「縁(えにし)」理事長の藤田正彦さん(33)は、子どもは汗腺が大人の6割程度しか機能していないことにも触れ、「汗を使って体温を下げる機能が劣り、熱中症になりやすい」と語る。さらに、気温が体温より高くなれば、汗が蒸発せず、熱が放散されにくくなるという。

 藤田さんは「子どもが大人より暑い環境にいるとの正しい知識を付けることが最初のステップ」と説く。知ることで、早めに熱中症の予防策が取れるためだ。

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医療法人「縁」理事長の藤田正彦さん

 まずは「観察」だといい、例えば外で遊ぶ時は、その前後で、子どもの変化を注視する。顔が赤くなったり、急に口数が減ったりしていないかを注意する。

 顔が赤くなるのは、体の深部の体温が上がり、熱がたまり始めているサインだ。すぐに遊びをやめなくてもいいが、「警戒しなければ」と注意することが重要になる。

20分遊んだら、28度未満の屋内へ 

 対策の2つ目は水分補給。塩分などの電解質が含まれる飲料水は吸収効率が良い。糖分が気になるなら、例えばペットボトルを2本用意する場合、1本を水やお茶にし、もう1本を電解質入りにするのがお勧めだ。

 喉が渇く前に15~30分ごとに飲むことが大切だが、飲み忘れる場合もある。家庭内で30分おきの水分補給を習慣化しておくといい。

 また、盲点が「暑さから逃れる」こと。遊び始めて20分ほどたったら、28度未満の屋内で涼み、熱を逃がす。「日陰に入ったから大丈夫」と考える人もいるが、「近くにコンビニやショッピングセンター、自家用車があれば、そちらに入って」と提案する。

 外で遊び終わった際には問題がなくても、帰宅後に症状が出ることも。「だるい」「気持ち悪い」と訴えたり、食欲がなかったりしたら、いつもより部屋を涼しくし、水分を多めにとって休ませることが大切。「水分を拒否するようだったら、医療機関への相談も検討して」と訴える。

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