親を自死で亡くした自死遺児にどう接したら? 当事者と研究者が作った絵本「さよならなんかしない」 子どもが乗り越える力を信じて

「さよならなんかしない」(童心社)
主人公は自死で父親を亡くした男児
絵本は、父親を自死で亡くした小学生男児が主人公。当初、自死と知らされず、気持ちを抑え込んでいた。スクールカウンセラーと話をする中で心を開き、父の死を受け入れる。いつも通りに接する友達らとの交流を通して、救われていく。

主人公ユウに先生が「おとうさんがたおれた」と伝える最初の場面(=いずれも童心社提供)
文章を担当したのは、中学の頃に継父を自死で亡くした社会福祉士でスクールソーシャルワーカーの佐藤まどかさん(65)=大阪府箕面市=と自殺対策の研究をする南山大(名古屋市)の森山花鈴准教授(44)。

「お父さんに会いたい…」とスクールカウンセラーに自分の気持ちを伝えるユウ
自死遺族支援の活動をしてきた2人は自死がなくならない中で、遺児の悲嘆を和らげ、支える「グリーフケア」の大切さを伝えたいと考えた。「自死は命を粗末にした結果ではなく、しんどくなってしまって起きる。子どもたちが傷つくことを少しでも減らせたら」(森山さん)と、2021年に遺児や接する大人が安心して読んで学べる絵本を構想。同様の本は見つからず、他の研究者らと「自死遺児支援プロジェクト」を立ち上げ、内容を練った。
「知らないふりをするのがつらかった」
物語は主に、長い間、実母から継父の自死を知らされなかった佐藤さんの体験を基にする。佐藤さんは自分の友人を問い詰めて知ったが「大人は偏った思いやりから隠す。(母親や周囲に)知らないふりをするのがつらかった」と振り返る。

「ずっと友だちや!」と主人公に伝える友だち
絵本では、スクールカウンセラーとの相談の中で、主人公が母に尋ねる場面を描いた。「大人は、子どもには乗り越える力があると信じて、ちゃんと向き合って」と佐藤さん。

相談室で母へ本当の思いを伝える
主人公が「男の子だから、お母さんをささえて」と、大人から声かけされる場面も盛り込んだ。森山さんによると、女性より男性の自死が多く、残された男の子が父親の役割を期待されることもある。本の中で子どもがその期待を背負う必要はないと伝えている。
最後は「また明日なー!」という主人公の言葉で締めくくった。森山さんが10代のころ、自死した友人が最後に残した言葉が「バイバイ」だった。戻ってこない怖さを感じさせず、希望を持たせたかったという。

「また明日なー!」と友人と笑顔で別れる
絵本の会話文は、関西弁で書かれている。担当編集者の西尾薫さんは「関西弁にすることで、標準語とは異なる柔らかさを出した」と話す。冒頭から白と黒のモノクロで描かれるが、主人公のユウが母とスクールカウンセラーに自身の気持ちを伝え、真実を知り、父との思い出を語るところから色がつく。「少年の心の変化を、色でも表した」という。絵本はB5変型判、65ページ、1870円。
自死遺児は全国で推計9万人
自死遺族や遺児の正確な数は不明だが、2008年の研究「日本における自死遺族数の推計」では、2006年時点で自死遺族は300万人で、うち遺児は9万人。
国の自殺対策白書によると、2024年の自殺者数は2万320人で1978年の統計開始以降2番目に少なかった。警察庁の統計では、男女とも50代が最多で男性2684人、女性1115人。小中高校生は529人で統計が始まった1980年以降で最も多かった。
絵本では、子どもの相談先としてチャイルドライン=フリーダイヤル(0120)997777=などを挙げる。厚生労働省のウェブサイト「まもろうよこころ」でも相談窓口を紹介している。
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