整理収納アドバイザー 井田典子さん 長男との葛藤で気づいた「子どもの人生は本人のもの」

(2020年3月22日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

家族のこと話そう

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(五十嵐文人撮影)

完璧な親に…思い詰めて 「軍隊みたい」

 広島で生まれ育ち、短大を卒業し就職。23歳で結婚し、上京して専業主婦になりました。二男一女の母です。

 長男(31)の育児は「完璧な親になろう」とコントロールしてしまいました。友達と公園で遊びたいのに、「昼食の時間」と長男だけ連れ帰ったり。ルール・時間厳守の育児で、ご近所で「軍隊みたい」と言われていたそうです。

 10歳の長男がテストで高得点でも褒めず、「算数ができるなら社会も頑張れば?」と言ってしまいました。長男は「僕はママの作品なの?」と泣きました。初めての反抗にショックでしたが、「本人のため」との思い込みから気持ちは理解できませんでした。

金髪、喫煙、飲酒…苦しかったのは本人

 長男は中学からテニスに打ち込みましたが、高校1年の時にけがで退部。部員仲間とも疎遠になり、学校も休みがちに。金髪、喫煙、飲酒と荒れていき、私と口もききません。ただ胃袋ではつながっていました。毎日空の弁当箱を持ち帰り、夕飯を取っておくと深夜に食べていました。

 ママ友に「でも毎日帰ってくるんでしょ? 安心できる居場所なんだよ」と言われ、救われました。長男は「どうしていいか分からなかった」と振り返ります。一番苦しかったのは本人。寄り添えなかったことを反省しています。

美大中退、DJ志望 日本を離れて見違えた

 長男は美大に進学しましたが、2年の途中で「音楽をやりたい」と中退。さすがに夫(60)も突き放し、長男は8年間一人で暮らしました。DJを目指し、夜はライブハウスで修業。食べていけず、日中は飲食店などでアルバイトをしたため、体調を崩したことも。

 3年ほど前、「DJで一人前になる」と出直すつもりでオーストラリアに単身渡航。この年末年始、現地で再会しました。見違えるように元気。「健康でなければDJとして人を楽しませられない」と、玄米食など食生活にも気を使っています。街を歩けば、友人・知人から声がかかる。生き生きと人生を歩み、うれしかったです。子どもの人生は本人のもの。子は親の所有物ではなく、社会に出るまでの預かりものですね。

長男が荒れていた時、整理収納で”平和”に

 整理収納の勉強を始めたのは、長男が荒れていた約15年前。気分転換に家を片付けていると、次男(24)に「楽しそうだね」と言われたのがきっかけかも。長女(29)によると、当時の私は「常に『話し掛けるなオーラ』を出していた」そうです。

 私の両親は広島で被爆。教員だった父は生涯、平和活動に打ち込みました。私は、そんな両親に引け目を感じていました。でも家の中を整理すると、心が平らになる。これも平和活動のかたちなのでは…と今は思えます。

井田典子(いだ・のりこ) 

 1960年、広島市生まれ。整理収納アドバイザーとして200軒以上を「片付け訪問」し、整理術を伝授。「ガラクタのない家」(婦人之友社)など著書、メディア出演多数。昨年12月まで東京新聞生活面で「住まい彩り」を連載した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年3月22日

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