地域住民も巻き込み一緒につくる 一人の人間として子どもを尊重する遊び場【香港プレーパーク奮闘記・下】

朝の体操に参加して住人の女性たちと談笑する堀田奈都希さん(左から2人目)=香港・紅磡(ホンハム)で
香港の地域性をもっと感じたい
堀田さんがこのコミュニティーに参加しているのは「香港のローカルをもっと感じたい」という思いから。だが、もう一つ理由がある。それは、マンション住人の声を聞くことだ。
オープン前の工事期間中、このマンションから騒音などへの苦情が寄せられたことがあった。「同じ地域の人たち。対立したくない」。実際に言葉を交わしてみると、女性たちは現場に何ができるのかよく知らなかったようで、説明すると「良い活動ね」と理解してくれた。知る限り、その後はトラブルもないという。
遊び場を取り巻く環境に気を配るのも、東日本大震災の被災地での経験が根底にある。仮設住宅近くで子どもと遊んでいたときのこと。住民から「こんなところで何しているんだ」と胸ぐらをつかまれた。被災地では誰もがつらい状況に置かれ、余裕を失っている。子どもたちだけでなく地域社会や周囲の大人にもアプローチする重要性を学んだ。
体操以外でも、プレーワーカーとして正しいと思うことは積極的に行動に移している。
正式オープンの直前には、すでに一部開放していた無料の遊びエリアに来ていた地域の子どもたちを巻き込み、未開放の有料エリア内に設置する看板を一緒に作った。独断のアイデアだったため「オーバーなことをしていると思われるかも」と内心、懸念もあったという。だが、運営団体「智楽」職員のミン・シャムさん(41)は逆に「地域の人たちと交流して深いつながりを持つのがうまい」とこの行動を評価した。

高層マンションが立ち並ぶエリアに開園した「夢想無界二份一遊楽場」
子どもの性質は世界で変わらない
国や地域が変われば、その場所ならではの文化や慣習がある。日本や英国のやり方が受け入れられないこともあるが、「それでも伝えられることはたくさんあるはず」と堀田さん。看板の一件だけでなく、同僚たちが堀田さんの行動を見て「あれはどういう意図だったの?」と質問してくれることが時がたつにつれて増えた。前向きな変化が生まれている手応えはある。
そしてもう一つ、感じていることがある。それは「子どもの性質は世界共通でそんなに変わらない」ということだ。すぐに遊びに夢中になる子もいれば、慣れるのに時間がかかる子もいる。だから、場所が変わっても思いは不変だ。「大人が子どもをコントロールするのではなく、意志を持ったひとりの人間として尊重することが大事」
オープンから1カ月ほどたったある日。堀田さん宛てに、プレーパークで一緒に遊んだ男の子の保護者から手紙が届いた。その子は英語が話せなかったが、手紙には「あなたの優しさと気配りで、私の子はとても幸せそうだった」としたためられていた。言語の壁も簡単に越えられるのが「遊び」の力。まもなく任期を終えて帰国するが、プレーパークの意義を再認識させてくれた香港での日々を胸に、この道を歩んでいくつもりだ。
〈香港プレーパーク奮闘記〉香港初のプレーパークで奮闘する堀田さん。その姿から、国や地域が違っても変わらない子どもの「遊び」の大切さを3回の連載で考えます。
香港初のプレーパーク誕生の裏に一人の日本人女性 日英での経験買われ「自由な遊び」熱烈支援
プレーワーカーとして働く原点は被災地で出会った子どもたち 心から安心できる居場所づくりを
地域住民も巻き込み一緒につくる 一人の人間として子どもを尊重する遊び場(このページ)
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい










