“19時消灯ママ”が提唱する子どもの早寝、記者も試したら驚きの効果 小児科医「あらゆる問題が睡眠で解決する」

疲れが出やすい春が始めどき

 子どもはかわいいけれど、疲れている時など「つい怒りすぎてしまった」という経験はありませんか?

 3人の子どもを19時に寝かせるようにしてから子育てが楽になったというインフルエンサーの「19時消灯ママ」れーこさんは、子育てに悩んでいる人にこそ早寝に取り組んでみてほしいといいます。

 でも、フルタイム勤務や子どもの習い事などで帰宅が遅くても、早寝はできるのでしょうか。毎日19時帰宅のわが家が半信半疑で実践してみると、22時過ぎ消灯だったのが、すぐに30分、1時間と早められました。半年たった今では、20時前後に就寝しています。

 驚いたのは、子どもが朝6時台に自分で起きられるようになっただけでなく、私自身に心の余裕が生まれ、「イライラして怒りすぎて、反省する」という負のサイクルがなくなったことです。

 れーこさんによると、早寝の始めどきは春。進学や進級による新しい環境で疲れが出やすいこの時期がおすすめだそうです。

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早寝メソッドには教員時代の経験が生きていると語るれーこさん(顔の部分は、イラストレーター愛田あいさんの描いたイラストを合成しています)

19時消灯ママ れーこ

小6、小3、小1の3姉妹を育てる。元小学校教員。早寝を始めて子育てが楽になった経験をもとに、現在はフリーランスで、早寝早起きのメリットや早寝のための時間の使い方をインスタグラムとVoicyで発信する。2024年12月には「育児の悩みスッキリ解決! 子どもの早寝メソッド」(講談社)を出版した。

ワンオペで3人…試行錯誤を重ねて

 れーこさんは、姉妹が6歳、3歳、1歳だった2020年の春から19時に消灯する生活を始めました。それまでは就寝が22時を過ぎる日もありましたが、次女が幼稚園、長女が小学校に入り、自身もパートを始めて三女を保育園に入れるタイミングで生活が回らなくなったからです。

 家に帰ると、次女は泣き叫ぶなどのかんしゃくがひどく、姉妹にけんかをふっかけてばかり。長女は、朝起きられず手がかかる。夫の帰宅が遅くワンオペ育児のれーこさんは「このままでは子どもにひどいことをしてしまうのでは」と感じるほど追い詰められていました。

 このころ、長女が「学校に行きたくない」と言い出したため、疲れているのかもと感じ早く寝かせてみました。3姉妹が朝にすっと起きられる消灯時間を探り、何時がベストか試行錯誤を重ねました。19時は次女のかんしゃくも起きにくい、ちょうどよい時間でした。

 長女と次女は、19時に消灯するとすぐに寝ついたそうです。三女だけは保育園で昼寝をしてくるため、消灯から就寝まで1時間ほどかかりました。イヤホンで音声を聞きながら、寝かしつけを自分時間にして過ごしていました。

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ワンオペ育児に疲れ、夫に当たり散らす日々だったというれーこさん

 早寝で生活は一変。次女のかんしゃくは減り、長女は元気に登校し始めました。3姉妹はそれぞれ10~12時間眠り、夏は日の出とともに、冬は朝6時前後に起きるそうです。登園、登校まではピアノの練習や工作などそれぞれが楽しそうに過ごします。長女は、れーこさんがいくら言ってもやらなかった勉強に自ら取り組むようになりました。自身も子どもが寝た後に2時間超の自由時間が生まれ、心に余裕ができました。

 れーこさんは「もちろん、全くイライラしなくなったわけではないですが、早寝をする前の気持ちが不安定だったころから元の自分に戻れた」と振り返ります。

早く寝かせたいとは思っていても

 子どもの健やかな成長には睡眠が大切と理解しつつも、実際に早く寝かせるのはハードルが高いと感じられるのではないでしょうか。

 家庭の睡眠における課題を尋ねた2021年の民間調査では、0~2歳児を育てる800人のうち、「21時までに寝かせるのが理想」と68.8%が回答しました。ただ、実際にできているのは46.1%にとどまりました。

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れーこさんの著書「育児の悩みスッキリ解決! 子どもの早寝メソッド」

 れーこさんは、寝かしつけが遅れがちな原因を、帰宅後に家事と育児を同時に進めようとするからだと考えます。早寝の実践のためには、家事は子どもが寝た後に、と割り切り子どもの世話に集中することを勧めます。

 子どもの世話は風呂→夕食の順に済ませることがポイントだそうです。夕食が先だと、いすから立ち上がって風呂へ向かうのが大人でもおっくうになりがち。「お風呂に入ろう」という時間がかかるやりとりを最初に持ってくることで、その後は消灯まで滑り降りるように流れます。

 子どもの睡眠時間が長くなることで、親子で一緒に過ごす時間が減ってしまうと心配する人もいるかと思います。れーこさんは、「十分な睡眠で子どもが元気になると笑顔が増えて、不思議と親子の時間が充実したと感じられますよ」と話します。

記者も早寝に挑戦! イライラが消えた

 本を読んで、わが家が消灯時間を早めるチャレンジを始めたのは2025年8月。子どもが4歳だった当時のルーティンはこうでした。

◆平日のタイムスケジュール
18:00 保育園へお迎え
18:10 帰り道にある公園に子どもが吸い込まれる
18:30 「帰るよ~」「あと○回やったら帰ろうね」の声掛け。「やだ~」と言われる
18:50 帰宅(まだ早いほう)
19:00 お風呂を沸かす、夕食準備
19:15 食事開始
19:40 全然食べ終わらない。というか食べないのに「お菓子!」「これだけ食べたらね」のやりとり
20:00 子どもはYouTube。私は食洗機を回す、保育園で汚れた服の予洗い
20:30 なんとか子どもを説得してお風呂へ
21:15 遊んでお風呂から出ない。私がささっと体を洗おうとすると怒る
21:30 だんだん悲しくなってきて、もういいやと諦める
21:45 リビングのテレビでYouTubeを見ながら着替えとドライヤー。テレビを見ると手が止まるので着替えはゆっくり
22:00 「ヨーグルト食べる!」というので、保育園の準備をしながら待つ
22:15 歯磨き、消灯へ

 朝は7時から何度も声をかけ、なんとか7時半前後に起きてくる生活でした。

 忍耐力がなくて恥ずかしいですが、たまに寝る直前に怒りすぎてしまい「1日の最後を台無しにしてしまった…」と後悔することがありました。「私は子どもが1人しかいないのに、なんでうまく回せないんだろう」と思い詰めていた時期でした。

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本の付録「30日で早寝が叶うワークシート」に毎日の気づきを記入し、早寝の定着を目指した

 家事を後回しにするだけというシンプルなノウハウなので、始めてすぐに30分短縮できました。家事をしない分、子どもをせかすことなく食事、入浴ができます。帰宅後の時間の使い方に対する意識ががらっと変わりました。

 子どものルーティンを変えるには、「1、2週間ほど強い気持ちで新しいルーティンを貫けばよい」というれーこさんのアドバイスで、YouTube断ちも意外とすんなりできました。あれから半年たち、5歳になった今ではこのように変わりました。

18:45 帰宅
19:00 夕食開始(よく食べるようになり、寝る前のヨーグルトはなくなった)
19:30 子どもだけ入浴
19:45 YouTubeは見なくなったので、脱衣所で着替えとドライヤー
20:00 歯磨き、消灯へ

 休日は17時に入浴し、19時消灯です。夫婦の自由時間が増え、日々の充実感が上がりました。自然と、子どもといる時間も笑顔が増えます。何より、「疲れて自分の気持ちがあふれ出て怒りすぎる」のではなく、自分の感情をコントロールして子どもに注意すべき時にびしっと伝えることができるようになりました。

 昨年の春から消灯時間が遅くなる体操の習い事を始めたというれーこさんの家では、次女と三女が体操から帰ると20時15分になる日が週1日あるそうです。出発前に食事を済ませ、帰宅したら歯磨きとトイレだけで20時半には消灯しているといいます。お風呂は翌朝に回すというわけです。子どもの睡眠時間を確保することを優先しています。

小児科医が解説 睡眠は「自分の体を自分で調子よくする力」がつく

 小児科医の成田奈緖子先生も、自身の子育てで睡眠を大切にしてきました。19時半まで保育園に預けていたそうですが、帰宅後はご飯を食べさせて20時には消灯していたといいます。現在は、発達や不登校など親子の悩みに寄り添う「子育て科学アクシス」(千葉県流山市)を主宰し、相談にくる親子にまずは睡眠時間を見直して生活を整えることを推奨しているそうです。成田先生になぜ子どもの睡眠が重要なのか聞きました。

子どもの本来の力を引き出すために

 子育てにおけるあらゆる問題が、睡眠で解決します。乳幼児期だと、食事ひとつをとっても、食べてくれない、食べるのがゆっくりすぎる、遊び食べをするなどさまざまなご相談がありますが、睡眠時間をしっかりとるように伝えると、多くの家庭で「ご飯をパクパク食べるようになった」と変化が見られます。

 子どもは自律神経が出来上がっていないので、よく寝ることで脳のリズムができて、自分の体を自分で調子よくする力がつきます。食事面だけでなく、免疫力も上がるので、風邪をひきにくくなるし、心の安定にもつながります。日中、子どものかんしゃくが激しかった子がよく寝ることで穏やかになります。

図:子どもに必要な睡眠時間

 アクシスに相談に来られるご家庭は、小学校高学年から高校生で、朝起きられなくて不登校気味になる子や生理前の不調で悩む子が多いです。いずれも幼児期に生活リズムができていなかったことが一因にあると考えます。

体内時計は2歳までにほぼ完成する

 幼児期から生活リズムを整えておけば、思春期以降のトラブルは減らせます。ヒトの体内時計は2歳までにほぼ完成するため、それまでに早寝を習慣化することが理想です。ですから、子どもが生まれた瞬間から早寝に取り組んでほしい。幼いほど、生活リズムを立て直すことは簡単ですが、中高生になって悩んでからでもお子さんが本気で取り組めば間に合います。

 教科書には夜間睡眠は3歳までは12時間、4歳は11時間半(昼寝なし)、5歳は11時間と書かれています。今の忙しい生活ではなかなか難しいと思うので、せめてマイナス1時間を目指してほしいです。

成田奈緖子(なりた・なおこ)

発達脳科学者、小児科医、医学博士、公認心理師。文教大学教育学部教授。1987年神戸大学医学部卒業、米国や筑波大で分子生物学・脳科学などの研究を行う。子育て科学アクシスでは、医療・心理・教育・福祉を融合した新しい子育て理論を展開する。著書に「子どもが幸せになる『正しい睡眠』」(産業編集センター)「その『習慣』が子どもの才能をダメにする」(SB新書)ほか多数。

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