虫や鳥の目で街中の植物を見てみよう! 視点植物観察家・鈴木純さんが伝える「小さな発見」の楽しみ方

(2024年5月15日付 東京新聞朝刊)
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目線を下げて植物を観察する鈴木純さん(左から2人目)=いずれも渋谷区の代々木公園で(平野皓士朗撮影)

 緑が美しい季節。行楽地や野山を訪れるのもいいが、近くの公園や街中にも幸せの種はこぼれている。代々木公園(渋谷区)で開かれた植物観察家の鈴木純さん(38)の観察会に参加し、小さな発見の楽しみ方を教えてもらった。

「街中でどこでも見られるものを見る」

 4月中旬のある日、雲一つない青空の下、木々が風に身を委ねていた。鈴木さんは、観察会の参加者約20人に「植物の名前を知れば特徴がくっきりと浮かび上がります。観察すると、植物の仲間につながっていきます」と語りかけた。

 観察のテーマは「街中でどこでも見られるものを見る」。ぐっと目線を下げ、まずは、空の色を映したような青い花、オオイヌノフグリを観察する。背丈は10センチほど。その近くに、よく似た小さな花、タチイヌノフグリも見つけた。

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オオイヌノフグリの花

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タチイヌノフグリの花

 「花の形が似ていると仲間の可能性が高いです」と鈴木さん。「花びらの枚数や形などの特徴から自分なりの決め手を見つけ、じっくり観察していくと、どれが仲間か分かってきます」。それぞれの実を見てみると、ともにハート形。とても近い仲間だと分かる。

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オオイヌノフグリの実

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タチイヌノフグリの実

カタバミの葉で10円玉を磨くと…

 次は、5枚の花びらが特徴のカタバミ。小さな葉が3枚セットになっていてシロツメクサと似ているが、葉の形が異なる。

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カタバミの花

 カタバミはハート形で、シロツメクサは丸形だ。さらに、鈴木さんが10円玉を取り出し、カタバミの葉で磨くと、表面がピカピカになった。葉に含まれるシュウ酸の働きだ。カタバミは虫に食べられないよう、シュウ酸で身を守っているのだという。

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カタバミの葉を10円玉にこすり付けると表面がきれいになる

 「葉っぱは光を集め、生きるためのエネルギーを生み出す重要な部分。植物は動けないので、さまざまな方法で葉を守っています」

 だが、ヤマトシジミ(チョウ)の幼虫がカタバミの葉を食べるように、シュウ酸の働きも全ての虫に有効ではない。ここに鈴木さんは自然の面白さを感じるという。「独り勝ちはできない。植物の生き方を感じられます」

植物に目線を合わせて近づく

 では、植物観察のこつは? 鈴木さんは「距離感が大事」という。小さな植物を見るため、地面にはいつくばることも。「植物の高さまで顔を下ろし、目線を合わせて近づく。そうすると、人の視点ではなく虫や鳥などの視点になり、全く違うものが見えてきます」

 鈴木さんは東京農業大造園科学科に入学してすぐ、樹木の名前を180種類覚えるという課題を与えられたという。「最寄り駅にケヤキとクスノキが生えていて、普段からずっと見ていたのに、その違いも知らなかった。それがきっかけで、植物の世界にのめり込みました」と振り返る。

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ケヤキの幼木

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クスノキの葉と花

 鈴木さんによると、これからの季節におすすめの植物はカラスノエンドウ、アメリカフウロなど。「身近な植物に近づいて、自分なりの発見を楽しんでください」

鈴木純(すずき・じゅん)

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 1986年、東京生まれ。東京農業大を卒業後、青年海外協力隊に参加し、中国で砂漠緑化活動に関わる。帰国後の2018年、まち専門の植物ガイドとして独立。著書多数。今年3月、初の写真絵本「シロツメクサはともだち」(ブロンズ新社)を刊行した。

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鈴木純さんの初めての写真絵本「シロツメクサはともだち」

鈴木さんによる観察会(年間講座)は満員。今後の最新情報はWebサイト「まちの植物はともだち」やSNSで紹介している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年5月15日

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