誰もが幸せを感じられる社会について考えた ヤングケアラーの漫画を描いた水谷緑さんを取材して

嶋村光希子
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「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(文藝春秋)

子どもは家族で一番の弱者

 「明日がないと思っていた」。ある子どもの言葉です。その子は、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行う「ヤングケアラー」。精神疾患のある親から殺されそうになってもケアから逃れられない壮絶な経験のある子もいるといいます。ここまで極限の状態まで追い込まれてしまう子が存在する現状に胸が苦しくなります。

 ヤングケアラー当事者を題材にした漫画「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(文芸春秋)を出版した漫画家の水谷緑さんをインタビューする機会がありました。こども家庭庁とのタイアップ記事です。2年間かけて当事者10人以上に丁寧に聞き取った水谷さん。自身も出産後すぐで耳にするのもつらかった過酷な体験もありましたが「子どもは家族の中で一番の弱者」と実感したそうです。

評価しないで、日常会話を

 ヤングケアラーが近年注目される背景には、核家族が増える一方で地域のつながりは薄くなり、これまで伝統的に家族が担ってきた介護などの機能が低下していることがあります。表面化しづらく支援にもつながりにくいという課題もあります。

 漫画を読んで「自分には何ができるんだろう」と思う人がいるかもしれません。ヤングケアラーが身近にいるかもしれないという意識で、本人たちが孤立しないように気にかけることが大事といいます。当事者への声かけについて水谷さんは「否定や評価をせず、ささいな日常会話から始めてみては」と提案します。「大丈夫?」と聞かれても家の事情を知られたくなくて「大丈夫」と答えてしまう子は少なくないためです。

 もうすぐこどもの日。子どもの人格を尊重し、誰もが幸せを感じられる社会について、いま一度考えてみたいものです。

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