少年野球、うまくいかない息子を前に 正解がわからない〈清水健さんの子育て日記〉72

(2025年7月30日付 東京新聞朝刊)
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休んでもいい。でも、グラウンドに。親って不思議です

清水健さんの子育て日記

「今日のプレー、どうだった?」

 夜、フラッと近くまで、息子と歩く。これまたフラッと、ふたりでソフトクリームを食べた。少年野球。ミスが多かったこの日の試合。家に帰っても、息子は野球のことを何も言わない。僕もあえて、試合の話には触れなかった。

 ソフトクリームを食べながら、少しずつ、ぽつぽつと話しはじめる。あまり感情を表に出さない息子。頭ではわかっている。でも、まだ体がついていかない。きっと、相当に悔しいと思う。「今日のプレー、どうだった?」。そう言葉にする息子に、親として何をしてやれるんだろう。

 野球が好きではじめた少年野球。でも、今、その好きな野球が苦手なことに変わりかけている気がする。ミスをして、悔しくて、でも次のプレーで「見てろよ!」と負けん気を表現するタイプではない。逆に「また失敗してしまったら」と、次の一歩が小さくなってしまう。そんな自信なさげな息子の姿を、もどかしく思うこともある。

 でも、僕もどちらかというとそうだったので、息子の気持ちは痛いほどわかる。どうしても失敗への不安が先にきてしまう。強くなってほしいと思うけれど、息子以上に「何もなく試合が終わってほしい」と思う僕もいる。

 多くのことを経験すればいい。今の経験が、いつか役に立つから。でも。そんなことを、子どもの時に、僕自身も理解できていたか。無理である。

父親としての「本番」はこれから

 無理して頑張ってみせようとしていないか。仕事が休みの日は一緒に炎天下のグラウンドに立つ。それが僕なりの父親像。でも、僕なりの当たり前が、息子の重荷になっていないか。

 子育てに正解はないというけれど、どうすることが息子にとって一番いいのかわからない。難しい。本当に難しい。落ち込んだり、言葉にしなかったり。息子の性格を誰よりも知っているからこそ、悩む。親としての役割。父親としての「本番」は、まだまだ「これから」なんだと、改めて気づかされる。親として試されている気さえもする。

 練習を休みたいとは言ったことがない。重いバッグを背負い、暑い中、グラウンドに向かう。うまくいかないことは自分が一番わかっているはず。それでも。

 一緒にキャッチボールもできる。一緒に汗を流して走ることもできる。でも、母親がいればもっと違った? そんなことを考えても仕方がないのはわかっている。息子が「やる」と言うのなら、僕は、とことん、全力でサポートするだけ。日焼け止め対策を完璧にして(笑)、一緒に汗をかこうと思う。

清水健(しみず・けん)

 フリーアナウンサー。10歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。

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  • 3児の父 says:

    いつも東京新聞の記事を拝読しています。同じ年代の子どもの父として、励まされ、共感し、時には胸が締め付けられることもあります。今回の記事、うちの9才の息子もサッカーしており、何としても気持ちをお伝えしたくコメントいたします。

    うちの息子は負けん気が強い訳ではなく、緊張や不安が強い性格です。サッカーも「近くで見てて欲しい」と毎回付き添っています。それでも少しずつ自信を持てる様子もあり、これからもできることは何でもサポートしたいと思っています。一方で、息子が父を喜ばせたい、安心させたいために頑張っているのではないかと思うところもあります。常々「無理しなくていいんだよ」と伝えているのですが、息子の姿を父である私が喜ぶことで、それがプレッシャーになっているか?と感じることもあります。

    「息子のために」と思っていることがいつの間にか「自分のために」なってしまっていないか、これは子育ての永遠のテーマなのだと思いながら日々なんとか父を続けています。これからも自分と重ね合わせて記事を拝読させていたたければと思います。答えのない子育て、後悔のないよう、日々子どもに学ばせていただいています。

    3児の父 男性 40代
  • 南初子 says:

    清水さん、お疲れ様です。息子さん、少年野球されているのですね。好きな野球をしていて、これから楽しみですね。息子さんが悩んでいる時に話しかけるのって本当に難しいですね!親として悩みますね!息子さんも本当は大好きなパパに相談したいですが照れているのかな❓これからも色々あると思いますが息子さんを助けてあげてくださいね。これからも清水さんを応援しています💕💕

    南初子 女性 70代以上

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