親子ふたり旅、予定通りにいかなくても…〈清水健さんの子育て日記〉70

(2025年4月30日付 東京新聞朝刊)
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息子の先導での親子ふたり旅。帰りに立ち寄ったサービスエリアで

清水健さんの子育て日記

息子が計画した讃岐うどんの旅

 「次のお店までは15分だよ!」。助手席から声を弾ませる息子。自分の計画通りに進んでいることがうれしいのだろう。前日の夜に決めた、香川県・讃岐うどんを巡る日帰り旅。お店、住所、開店時間、食べたいメニュー、混雑具合などを調べ、移動時間は地図アプリで計算し、ノートに丁寧にまとめている。「ここの移動は厳しいかな」と思うところもあるけれど何も言わないようにした。

 大阪を朝6時に出発。3店舗をまわって、途中で「こんぴらさん」こと金刀比羅宮(ことひらぐう)に立ち寄り、最後にもう1店舗の予定。香川県へ向かう車内、自分で調べた内容を復習する。少し不安に思ったのか、「これで大丈夫でしょうか?」と、今どきの子どもらしく(?)AIに聞く。「麺の状況によって早めに閉まることもある」という情報を得て、車内で急きょ順番を変更。

 1店舗目は朝から行列で、30分くらい並ぶ。讃岐うどんのために、朝ごはんを我慢し、おなかが減っていた息子は、今回の日帰り旅、初の讃岐うどんの興奮も重なり、「並」にする予定だった注文を「大でも大丈夫だよね?」と変更。

 でも、想像通り、3店舗をまわった時点で「おいしいといくらでも食べられるよ!」と言いつつ、「無理だったら、こんなにおいしいんだから、今回は3店舗でも十分だね!」。ここまで、どのお店でも、麺はもちろん、おだしまで飲みほしていた。おなかいっぱいのはずだけど、自分で予定を立てた以上、意地もあるんだろう、もう食べられないとは言わない(笑)。

「お母さんと行っていたんだ!」

 「少し体を動かしておなかをすかせよう」。こんぴらさんの石段1368段を上る。これは僕の提案だった。帰宅後、「お母さんと行っていたんだ!」。いつも飾ってある写真の風景と、この日見た風景が一致して、うれしそうな表情をみせる。

 移動の車内では、ふたりでラジオを聴いた。スマホのアプリなら高音質で聴くこともできるけれど、あえて車のラジオで。息子は番組にメッセージを送り、読まれるのを楽しみにしていたが、トンネルに入る度に電波が途切れ、音声は「ザーッ」と乱れる。メッセージはおそらく読まれていない。でも、「あっ、今、名前が呼ばれた?」「呼ばれたよね!」と興奮。こういう経験も良いもんです。

 4店舗の予定は結果、3店舗に。計画通りにいかないことを楽しんでほしい。香川県から兵庫県に入るころには、普段は車で寝ない息子が、ぐっすり眠っていた。満足できる旅になっただろうか。親子ふたり旅、今度はどこに行こうか。

清水健(しみず・けん)

 フリーアナウンサー。10歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。

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  • Ryoko says:

    親子で日帰り旅行楽しかったですね。そして亡くなられた奥さまと行かれた場所、凄く感動しました。

    本を出され、すぐに書店に行き買いました。今も大切に持ってます。息子さんも大きくなられ、奥さまもいつも側で息子さんと健さんを見守って下さってますね。3人はいつも一緒🤝

    これからも、息子さんと一緒のコラム楽しみにしてます。

    Ryoko 女性 70代以上
  • 南初子 says:

    清水さん、お疲れ様です。息子さんと2人で旅行されたのですね。息子さんが計画され凄いですね!大好きなパパとおうどんを食べられて本当に嬉しかったと思います💕とてもいい思い出になりましたね😊

    旅の思い出を忘れないと思います。息子さんとの大切な思い出になりましたね。これからも息子さんといい思い出を作ってくださいね。これからも体に気をつけて頑張ってくださいね

    南初子 女性 70代以上

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