俳優 美咲姫さん 興味を持ったことは全部やらせてくれた 「いいよ」に母の深い愛情

故郷の鹿児島について話す美咲姫さん(黒田淳一撮影)

各界で活躍する著名人が家族との思い出深いエピーソードを語るコーナーです
「芝居がしたい」言い出せなくても
両親と兄の4人家族で、鹿児島で生まれ育ちました。私は父が50歳近くになって生まれた子で、兄とも一回りぐらい年が離れています。母は休みが不定期だったので、休日に遊んでくれたのは土日休みの父。私が「動物園に行きたい」と言うと遊びに連れて行ってくれるのですが、「来週も行きたい」「再来週も行きたい」と頼んでも毎週連れて行ってくれました。甘やかされて育ったなと思います。
母も私が興味を持ったことは全部やらせてくれました。本気で俳優を目指して上京しようと思った時に「東京へ行って頑張ってみたい」と相談すると、「いいよ。頑張ってみたら」と言ってくれて。その後で「で、東京で何するの?」と理由を聞かれました。
当時、私は地元の大学に通っていました。学校をやめるとなれば、入学金や学費を無駄にしてしまうことにもなります。私は絶対に「だめ」と言われると思ったのに「いいよ」と。もし先に「どうして?」と聞かれていたら、うまく自分の言葉で伝えられずに諦めていたかもしれません。
小学生でスカウトされた時、恥ずかしくて「興味ない」と答えてしまったことがありました。中学で演劇部に入ったことをきっかけに、お芝居をしてみたいという私の思いに母が気付いてくれて。でも、高校卒業の時に俳優を目指したいとは言い出せなかった。母は私のそういうところを分かった上で、「いいよ」と言ってくれたのかなと思います。
支えてくれる家族に胸を張りたい
一昨年に鹿児島から上京する時に、父が「心配だから一人で行かせられない」と、家族会議になりました。母が仕事を辞めて付いて行ってはどうかという話もあったのですが、結局、IT関係の仕事をしていた兄が「僕が一緒に上京するよ」と。心配しすぎですが、あらためて家族に愛されているなと感じました。
初めての主演映画では、脳腫瘍と闘う高校生の役を演じています。作品のモデルとなった愛知県の坂野春香さんのご両親が書かれた本を読んだり、実際に生前の様子を聞いたりして挑みました。娘を思い出すことはつらいことではあるけれど、そうではない思い出もある。「自分たちが話すことで娘が生きていた証しを誰かの心に刻みたい」という意志がひしひしと伝わってきました。
役を演じる中で親ってすごい存在だと思いましたし、子どもに対する愛情は、私の両親とも共通しているように思いました。私はまだ、そんな親になれる自信はありませんが、もし子どもを持つことがあったら、やっぱりやりたいことをやらせてあげたい。だから特に上京してからは感謝しかありません。父と母に胸を張って作品を見てもらえるような俳優になれるように頑張りたいなと思います。
美咲姫(みさき)
2004年、鹿児島県生まれ。23年に上京し、芸能活動を始める。出演作に映画「素晴らしき日々も狼狽(うろた)える」「しまねこ」。映画「春の香り」では、悪性腫瘍と闘いながら漫画家を目指し、18歳で生涯を閉じた主人公のハルカを演じる。23日時点でイオンシネマ板橋(東京)、アップリンク吉祥寺(同)などで上映中。
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