ベイリー、お疲れさま 闘病の子どもたちを励ますファシリティドッグが「引退」

福浦未乃理 (2018年10月17日付 東京新聞朝刊)
 病気と闘う子どもを元気づけるファシリティドッグとして神奈川県立こども医療センター(横浜市南区)で活躍してきた「ベイリー」(ゴールデンレトリバー、十歳の雄)の引退セレモニーが16日、センターであった。これまで勇気をもらってきた患者や元患者ら多くの人が集まり、感謝の気持ちを伝えた。 
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これまで触れ合った子どもたちやその家族らに囲まれるベイリー(中)と森田さん。左はアニー=横浜市南区で

手術前の不安な子どもに寄り添う 国内に3頭

 ファシリティドッグは専門の育成機関で訓練を受け、病院などに配置される。手術前で不安な子どもの付き添いをするほか、ベッドでの添い寝やリハビリの同行、家族のケアも行う。現在、国内には3頭いる。

 ベイリーはトレーニングセンターがある米ハワイで約1年半の訓練を受けた後、2010年に静岡県立こども病院(静岡市葵区)で国内初のファシリティドッグとして活動を始め、12年に同医療センターに移った。引退は高齢のため。今後も同センターに残るものの稼働時間が短く、体力的負担が少ない仕事に就き、後任はアニー(2歳の雌)が務める。

 セレモニーでは、これまでの活動を振り返るとともに、手術前の女の子との触れ合いがテーマの絵本「ベイリーとさっちゃん」を参加者が朗読。その後、患者らがメッセージを述べた。

「治療に前向きになれた」「病室の空気が明るく穏やかになった」

 ベイリーのおかげで病院が好きな場所になり、今は東京都内で看護師として働いている杉本真子さん(25)は「ベイリーに出会ってから治療にも前向きになった。2年半の闘病生活で心の支えだった」と思い出を語った。

 ベイリーに指示を与える「ハンドラー」として生活を共にしてきた看護師の森田優子さん(37)は「以前は病院に犬が常勤するなんて日本では考えられなかったが、今この病院では当たり前になった」と話し、「悲しみに包まれていた病室の空気が、明るく穏やかなものへと変わりました」との言葉をもらったエピソードも披露した。

 最後は皆で記念撮影。病室から駆け付けた金村駿汰君(6つ)は「いつもありがとう。これからもよろしくね」と書いた手紙を渡して満足げだった。

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