苦しい時は「れもんハウス」においで 子どもだけでも親子連れでも安心して過ごせる、西新宿のみんなの家
「親子が安全に家出できる場があれば」
東京生まれ、横浜育ち。子どものころから通う教会では差別や貧困といった社会問題が多く話題に上っていた。平和を築くことが生き方のテーマに。大学生で福祉を志し、卒業後に社会福祉士資格を取得。2015年、都内の母子生活支援施設で働き始めた。
施設では家庭内暴力や障害、貧困などで支援を必要とする母子が一定期間生活していた。支援員として子どもを風呂に入れたり、通院に同行したり。関係をこじらせた母子からそれぞれ愚痴を聞き、相談に乗ることも。ただ、一度退所すると再び施設で宿泊することは難しく「親も子も安全に家出ができる場があれば」と考えていた。
区の依頼を受け、数時間~数日受け入れ
そんな時、思いを実現できそうな一軒家が偶然見つかった。共感してくれた不動産会社が物件を買い取り、賃貸契約を結ぶ形で2021年11月、れもんハウスを仲間とオープン。名称は「どんな立場の人もいやすくなるように」と意味を持たせず、仲間がたまたま作った鶏肉のレモン煮から付けた。
れもんハウスでは、入院や仕事で子どもをみられない家庭をサポートする新宿区の子育て短期支援事業を担う。新宿区から依頼があると、区に登録した有志約20人でシフトを組み、子どもを数時間から数日受け入れる。ほかにも、支援施設で出会った母子やボランティア、その友人、近所の人などが訪れ、輪を広げてきた。
役割に追い詰められて苦しい人のために
いつもわが子の動向を気にしてばかりいた母親が最近、れもんハウスで思い切り好きな歌手の話をしていた。そのうち、走り回る子どもたちの中で気持ちよさそうに眠ってしまった。その様子を見て「めっちゃうれしかった。れもんハウスを作って良かった」とにこり。
「ひとり親の私が頑張らないと」「お姉ちゃんだから手伝わないと」と、周囲から求められる役割を内在化し、本来の自分を押し殺して苦しくなっている人は多い。「役割から離れて人と向き合う時間は、誰にとっても必要。全然違う価値観の人同士が出会えて、世界が広いと感じられる場を作っていきたい」
子育て短期支援事業
保護者が子どもの養育が難しい場合に、児童養護施設や母子生活支援施設、協力家庭などで一定期間、子どもを預かる。主に宿泊利用を想定した「ショートステイ」と、夜間利用の「トワイライトステイ」がある。対象事由は自治体により異なるが、入院や家族の介護、仕事、育児疲れなどがある。2021年度は全国で約580の自治体が実施。新宿区では利用料が1日3000円などで、所得に応じて減免制度もある。
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