【虐待防止月間】三原こども担当相 新宿区の児童相談所を視察 都独自の「治療指導課」の課題とは
三原じゅん子こども政策担当相は5日、東京都新宿区の都児童相談センター(都中央児童相談所)を視察し、職員と意見交換しました。三原大臣は、10月の就任会見で「社会全体で取り組まねばならない」と児童虐待防止について強調し、児相の児童福祉司と児童心理司の増員をはじめとする相談支援体制の強化に取り組む姿勢を示していました。
現場の声をさらなる支援へ
施設からの説明の場での冒頭の挨拶で、三原大臣は「こども家庭庁は、児童福祉司と児童心理司の増員をはじめとする相談支援体制の強化に取り組んでいるが、現場の声を聞き、さらなる支援につなげたい」と話しました。
三原大臣は、児童福祉司ら専門職がチームで相談対応する「執務室」をはじめ、子どもの心理的ケアなどを行う「プレイルーム」、精神的な不調のある子どもを受け入れる「治療指導課」などを見て回りました。
報道陣に公開されたプレイルームでは、箱の中で子どもが砂や人形を使って遊んだり、気持ちを表現したりして、心理的ケアを行う「箱庭療法」の説明がありました。
都独自の「治療指導課」
職員によると、プレイルームには子どもと心理職の2人で入りますが、心理職は離れたところから子どもの行動を見守ります。職員が「虐待を受けた子どもは、人形を全て砂の中に入れてしまったり、血みどろな争いを表現したりすることもあります」と説明すると、大臣は「これで心の底の状態が分かるのですね」と話し、砂や人形に触れて確かめていました。
治療指導課とは、精神的な不調のある子どもが居室に1週間ほど宿泊し、心理職や福祉職、児童精神科医らが子どもの生活の様子を観察して支援につなげていくための場所です。どんなタイミングで不調になるのかを見定め、子どもたちにアドバイスもするそうです。都の児相の中でも治療指導課があるのは児童相談センターだけで、全国でも珍しいということです。
利用する子どもは、家庭や児童養護施設などから紹介されて来るそうで、発達に課題があったり、虐待で傷ついたりなど、要因は複合的です。治療指導課を必要とする子どもは多いといいます。
ケア後の居場所がない
職員はこの日、こうしたケアニーズの高い子どもたちが、児童精神科に入院した後、「退院後の受け皿がない」問題を大臣に訴えました。専門的な支援が必要なため家庭には戻れず、児童養護施設も職員不足で対応できない。やむをえず、一時保護所に滞在せざるをえないケースが多いそうです。
都児童相談センターの加藤夕起子事業課長は取材に、ケアニーズの高い子どもは多いといい、「里親がなかなか増えない中、児童養護施設も小規模化が進み、子どもと密な関係を築くことが求められる中で、ケアニーズの高い子どもを1人受け入れると、他の子に手が回らないという人手不足を抱えている。児童養護施設も児童相談所もケアニーズの高い子どもへの対応に追われ、若手職員の人材育成など職員へのケアが足りていない」と話しました。
三原大臣は視察後、「人材確保が喫緊の課題だとよく分かった。今日も若い職員が多くいらっしゃった。急な増員で、学校を卒業されてすぐのみなさんに働いていただいている。定着していただくことが非常に重要と感じたので、しっかりと寄り添う取り組みを進めたい」と述べました。
三原大臣は、10月末に行われた報道機関のグループインタビューでも、児童虐待防止への思いについて語っていました。
―児童虐待防止の活動を始めたきっかけは何でしょうか。
私自身が流産を経験し、子どもを授かれなかったこともあり、生まれてきてくれた子どもの命を守ることにとにかく取り組みたい、0歳児の虐待を防ぎたい、ということがきっかけでした。児童虐待防止はこども家庭庁だけではできず、マスコミの協力も得たい。地域のみなさんにも協力いただいて、「189」(児童相談所虐待対応ダイヤル)に通報してもらうことも重要です。
児童相談所などの人員を増やすことも取り組んでいるが、精神的につらい仕事と聞いています。退職する人も多くいる。そういう方たちの精神的なケアをすることも大切です。
2010年に参院議員に初当選してから15年間近く取り組んできており、これまで視察などしてきました。あらためて現状を知ることから他にできることはないか、考えていきたいです。