川崎の高校教諭が「月30時間」を生み出す仕事術を出版 個人レベルで効率化、残業は半分くらいの体感に

志村彰太 (2025年9月19日付 東京新聞朝刊)
 旅行会社から転職し、政治経済や公共を教えている神奈川県立百合丘高校(川崎市多摩区)の古賀禄太郎(よしたろう)教諭(44)が、現場に近い立場という強みを生かし、より実践的な教員の働き方改善を提言している。「多忙」の原因分析や業務効率化などをテーマに講座を開いたり、書籍を出版するなどして、自ら編み出した「時短術」を広めたいという。
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執筆した本を紹介する古賀さん=川崎市多摩区で

高校生の進路支援をしたくて転職

 古賀さんは福岡県出身。大学進学とともに神奈川に転居し、大手旅行会社に就職。「会社では『効率的に時間を使え』と常に言われていた」という。高校生の旅行の付き添いをした際、「将来への展望を抱けない」といった相談をされることがあった。「もったいない。高校生の進路支援をしたい」と考え、29歳で教員に転職した。

 教員としての生活が始まると、「忙しさに驚いた」。授業とその準備以外にも、会議や研修、事務処理、部活動の顧問などがあり、帰りは午後10時を過ぎるのが日常で、残業時間は過労死ラインの一つである月100時間を超えていた。土日祝日は部活動の引率があるため、「丸一日休めることはなかった」と振り返る。

 近年は事務作業を担う「業務アシスタント」が各校に配置されるようになったが、少し改善された程度だった。県の予算には限りがあり、追加的な政策を期待するより個人レベルで業務改善に取り組むべきだと考え、民間時代に培った知見を生かして教員2年目から業務改善に取り組んだ。

教材の定式化、会議資料の簡略化を

 作成する教材を定式化したり、職員会議の資料を簡略化するなど、事務作業を削減。当初は「何でも効率化すれば良いわけではない」と、職場内で反発もあったという。生徒の成績管理や見守りなど、「効率」では測れない部分と効率化すべき部分を分けることで理解を得ていった。

 ここ数年、残業時間が月100時間を超えることはなくなり、「体感で残業時間は半分くらいになった」という。後輩からもスケジュール管理のコツを聞かれることが増え、幅広く普及させようと3年前からセミナーを不定期で開いている。

 1月には書籍「月30時間の自由を生み出す仕事術 教員の生産性向上の教科書 学校でも会社でも教えてくれない働き方のキホン」(アメージング出版、223ページ、1870円)を出版。教員の多忙さと生産性の分析、業務の優先度順の分類とスケジュール管理、情報通信技術(ICT)の活用による効率化方法などを解説している。

 古賀さんは、効率化で生み出した時間を生徒と接する時間に回してきたが、2人の子どもの父親でもある。「仕事と家庭の両立も考えたい」。今後は、子育てを抱える教員向けのセミナーを開いていきたいという。 

元記事:東京新聞デジタル 2025年9月19日

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