〈産後パパ育休のポイント②〉「取るだけ育休」を回避 実践的な研修を行う企業も
グリコとユニ・チャームが無料で研修
乳児用ミルクを手がける江崎グリコ(大阪)と、紙おむつなどのユニ・チャーム(東京)は4月から、育児や育休制度などについて学ぶ独自の両親学級「みんなの育休研修」の無料提供を開始。これまでに20の企業や自治体で開かれた。
研修は、育休を取得した男性の体験談や、業務引き継ぎのポイントを紹介する入門編と、家事や育児の分担方法を教えたり、ミルクの作り方や紙おむつの着け替えを体験したりする実践編があり、計1~2時間。管理栄養士や子育てアドバイザーらが講師を務める。
愛知県岡崎市は8月、市役所で初めて開き、希望した20~40代の男女の職員計24人が参加した。生後2カ月の長男と妻(31)と暮らす市住宅計画課技師の鈴木仁さん(31)は「数カ月間、2~3時間おきに子どもにミルクをあげる必要があると知り、睡眠が取れなくて大変だと思った」と驚いた様子。「より夫婦で一緒に育てている感覚になれる」と育休を望み、業務を調整しているという。
育休取得でマルチタスク能力が備わる
岡崎市は2016年度から、妊娠した配偶者を持つ男性職員らと管理職による育児支援面談を導入。以降、男性の育休取得率は上昇傾向で、2021年度は41.8%に達した。ただ、育休取得前の職員向け研修はなかったため、さらなる取得率アップを目指して育休研修を取り入れた。
「育児に参加した男性職員は、家事など複数の作業を同時にこなすマルチタスク能力が備わる。限られた時間で効率的にいろんな業務を進めていくことに注力できるようにもなる」。研修を担当する市人事課主査の加藤拓也さん(32)は、育休取得による仕事への好影響を期待する。
江崎グリコの広報担当者は「夫婦で育休を取り、家事や育児をサポートし合うことで良好な関係を形成できる。母親が仕事復帰をしやすい状況をつくり、親子の絆も深められる」と話す。
就業時間内に開催すれば参加しやすい
男性の育児参加推進を目指すNPO法人「ファザーリング・ジャパン」(東京)理事の塚越学さん(47)によると、両親学級はこれまで、産院や自治体が平日に開催する場合がほとんどだった。各職場で就業時間内に開けば、働く人も参加しやすい。企業にとっても両親学級を開くことで従業員の出産や育休の情報を早くつかめ、人員配置や業務の調整、育休取得の打診もしやすくなるという。
ただ、講座の内容は、自治体や産院と企業では異なる場合が多い。「夫婦でどんな生活が待っていて、仕事の両立はどうしたらいいのか、キャリアや働き方の話が必要」と塚越さん。自身が講師を務める際は、産後の生活の説明に重点を置き、「急な発熱や保育園の休園で、明日の仕事ができなくなることも多い。毎日終業30分前には最低限の引き継ぎをしよう」といった具体的な働き方の助言もするという。
子どもの乳幼児期に夫が育児をしない場合、妻の夫への愛情が低いままになるとのアンケート結果や、産後に離婚を考えたことがある女性が過半数を占めるといったデータなども紹介する。塚越さんは「まず乳幼児期に夫婦で一緒に子育てをするのが大切」と強調する。