教員の働き方改革で小学校の登校時間が15分遅くなり…保護者に悩み「自分の出勤が間に合わない」 朝の校庭開放で解決した学校も
「自分が先に出勤 心配でたまらない」
同様の経験をした人もいた。愛知県豊田市の女性(47)は、子どもの通う小学校から昨年10月ごろに「来年度から学校に着く時間を10分遅らせて」と連絡を受けた。自身はパートを辞めた直後で、始業時間が遅い仕事を探せばいいと感じた一方、「新年度まで半年を切った時期の遅い連絡で、きっと多くの人が困ると思った」と振り返る。
「毎日息子より早く出勤していて、無事に学校に着いたかと心配でたまらない」と話すのは、岐阜市で小学4年生の息子と2人で暮らす女性(40)。以前は集団登校だったが「登下校は学校の管轄ではない」との理由で廃止され、なおさら不安が募る。
教員側の事情も 背景に社会の無理解
教員側の事情も。小学校の元教員という名古屋市の女性(65)は「教員も子育てしながらフルタイムで働く仲間」。勤務時間が8時半からでも、児童が来る前の7時45分には学校にいた。「自分の子を早い時刻に保育園に置いてくるのはふびん」だったという。保育士も教員も激務で人手が足りないと感じていて「人数を増やしてほしい」という思いが強いという。
社会全体の問題との指摘も。浜松市の女性(42)は「問題なのは登校時間に合わせて出勤時間を選べないことや、柔軟な働き方ができない環境、社会の理解が薄いこと」と訴える。
始業前に校庭開放「朝の子ども教室」八王子市で好評
ボランティアが見守り 7時台の学校も
こうした中、子どもたちの朝の居場所を確保する試みが一部の地域や学校で始まっている。
午前8時になると校門が開き、待っていた子どもたちが次々に校舎へ足を進める。東京都八王子市の愛宕小学校では、今年3月から始業前に校庭などを子どもたちに開放する「朝の子ども教室」の取り組みを始めた。教室に荷物を置き、校庭で遊びたい子どもたちが次々に外へ。ドッジボールやサッカー、鬼ごっこなど思い思いに体を動かす。
保護者や地域住民でつくる学校運営協議会会長の貴家(きや)由美子さんが「子どもたちが毎朝いられる、遊べる場所を」と学校と話し合い、下校時間後に、児童が校内で遊ぶ放課後子ども教室の「朝版」として発案。授業が始まるまで、貴家さんや登下校を見守る「安全ボランティア」が、毎朝50人ほどの子どもたちと過ごす。
保護者らからは「大人が一緒だと安心する」などと歓迎の声が上がるという。愛宕小の荒谷弘喜校長(56)は「教員は勤務外の時間である朝の責任の所在がはっきりして、安心して子どもたちを迎えられるようになったと思う」と話す。八王子市では、ほかにも3校で同様の取り組みが始まり、7時台に校門を開けている例もあるという。
学校・行政・地域にできることは何か
NPO法人日本こどもの安全教育総合研究所の宮田美恵子代表は「放課後の子どもの居場所は対策が取られてきたが、朝をどうするかというのはスッポリ抜けていた」と指摘する。
校門を開ける時間を遅らせる学校が今後増える可能性もあるとし、「どこまでが教員の領域か、線を引く必要はあるが、保護者だけで抱える問題ではない。地域で子どもたちを見守ってきた人たちも高齢化している。学校や行政、地域で何ができるのか、全国的な展開を視野に入れて考えていくべきでは」と話す。
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