手探り続く「母親」兼「管理職」 昇進できない「マミートラック」
「昇進試験受けないか」…時短にしたら声がかからなくなった
「出産後、短時間勤務の制度を利用したら、『昇進試験を受けないか』という声がかからなくなった」。通信会社に勤める名古屋市千種区の女性(41)は、諦め気味に話した。
女性は入社20年目。9年前に出産するまでは営業畑でバリバリ働いた。この女性の会社では、上司から打診されて昇進試験を受けるのが通例。女性はしばしば打診され、「同期一」といわれるスピードで昇進してきた。しかし、育休から復帰して短時間勤務にすると、やる気は変わらないのに他の部署に異動になり役職もなくなった。「会社から説明はないが、時短勤務にしたことで昇進する意欲がないと思われたのかも」
納得できなかったが、次第に「無理なく子育てに時間が取れる」と思うようになった。しかし「出産してもバリバリ働きたい人は不本意だろうし、社員が培ってきたことを生かせないのは会社にもマイナス」という思いは今もある。
育児に手がかかる時期が過ぎれば、キャリアアップを目指す女性もいる。「年齢や出産に関係なく、会社は長い目で育成すべきだ」
「男性・独身者にしわ寄せ」に複雑な思い
一方、愛知県内の会社員女性(43)は出世したいとは思わず、マイペースにやってきた。ところが5年前、長男を妊娠すると、上司から昇格試験の受験を勧められた。ちょうど会社が女性管理職を増やすよう取り組み始めたころだった。
育児との両立が不安だったが「やりがいのある仕事をするチャンス」と説得され受験。ゆっくり休みたかったが、産後3カ月で復帰した。試験は次々合格、今年2月に管理職になった。
だが「女性だから昇格できた」と言われることも。定時退社が基本で、子どもの病気などで早退も多い。「部下もお母さんばかりだったら立ちゆかない。かといって、男性や独身者にしわ寄せがいくのもどうか。全員が定時に帰れる部署でないと不満が出るのでは」と、複雑な思いを抱える。
長い目でキャリアを捉えて
DVDレンタルや中古品販売などを手掛けるゲオ(名古屋市中区)は2016年、「ダイバーシティ推進プロジェクト」を立ち上げ、女性の活躍を推進する。現在はグループの従業員約4000千人の15%にとどまる女性社員を、20年3月までに100人増やし、30年には女性の管理職を3割以上とする目標を掲げた。
今年から専任社員を置き、男性管理職や女性社員の研修会、女性社員だけの会議を開き、働きやすい職場づくりのための意見交換を続ける。ただ離職する女性もまだ多い。プロジェクト担当の堀亜由美さん(29)は「どうしたら活躍できるのか分からない女性社員が多く、存在意義を見失いがちになっている。まずはモデルをつくりたい」と話す。
企業研修などを手掛けるコンサルタントの余語まりあさん(58)は「長いスパンでキャリアを捉え、例えばワーキングマザーで短時間勤務なら、時間内で何ができるかを考え、上司に明確に伝える必要がある。上司はそれぞれの立場を理解し、力を生かす道を探してほしい」と指摘する。
女性活躍推進
2015年8月、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が成立。数値目標を盛り込んだ行動計画の策定などを事業主に義務付けた(一部は努力目標)。内閣府男女共同参画局によると、12年からの5年間で全上場企業(3500~4000社)の女性役員は2.4倍以上に増えた。20年までに女性役員の割合を10%とする目標を掲げているが、17年7月時点で3.7%にとどまっている。
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