小児近視の進行を抑制する点眼薬「リジュセアミニ」が承認 日本製で初、保険適用外のため関連治療はすべて自己負担

近視進行を抑える点眼薬「リジュセアミニ 点眼液0.025%」
進んだ近視は改善できないが…
愛知県春日井市の平田眼科春日井本院では4月から、軽-中程度の近視と診断された主に小中学生約10人に、点眼薬「リジュセアミニ 点眼液0.025%」を処方している。参天製薬などが開発した。院長の平田文郷さんは「近視の進行による不便さ、さらに30、40年後のリスクも避けるために使う」と説明。「進行抑制には有効だが、進んだ近視を改善する効果まではない」とし、「屋外での活動時間を増やす」「スマートフォンの画面など近くを見る時間を減らす」といった進行を防ぐ生活習慣も心掛けるよう説いている。
点眼薬の有効成分は、アトロピン硫酸塩水和物。この成分が、外部からの刺激で目の奥行き「眼軸」が長くなるのを抑える。近視の多くは眼軸が伸びる軸性近視。眼軸の伸びを抑えることが、近視の進行抑制につながる。

軸性近視の構造
小児期に近視が進むと強度近視になりやすくなる。そうなると中年期以降に、視力のさらなる低下や失明をもたらす網膜剝離、近視性黄斑症などの疾患を招く確率が上がる。点眼は、それを防ぐ効果が期待される治療でもあるという。
参天製薬などが、軽-中程度の近視の5~15歳を対象にした3年間の臨床試験では、点眼薬を投与したグループは投与しなかったグループに比べ、近視の進み方が緩やかになった。治療に年齢制限はないものの、8歳前後が近視が最も進みやすい年齢であることや、治験で効果を確認した年齢層などから、「小児の近視患者が対象と考えている」(同社広報)という。
また、臨床試験では点眼薬の投与を中止すると、かえって近視の進行が速まることも明らかになった。筑波大医学医療系眼科准教授の平岡孝浩さんは「近視の進み具合が安定する10代後半まで投与を続けることが望ましい」と指摘する。
安全性に配慮して使い切りに
課題としてアトロピン硫酸塩には、瞳孔を広げる働きがあり、まぶしさを感じやすくなるという難点があった。参天製薬などは、アトロピン硫酸塩の濃度を0.025%にすれば、まぶしさを感じる副作用を1割以下に抑えつつ、進行抑制の効果も得られることを臨床試験で確認し、製造販売の承認を申請。昨年12月に認められた。
承認前は輸入点眼薬を入手するしか方法がなかったが、同様の成分を含む輸入薬と違うのは、安全性に配慮して、防腐剤を使わない1回使い切りにしたこと。1日1回、就寝前に使う。点眼薬自体は1カ月4000円程度だが、診察・検査代や、眼鏡の処方にかかる診察代もすべて自己負担に。費用は医療機関により異なる。
近視の進行を抑える治療はほかに、特殊なハードコンタクトレンズを装着するオルソケラトロジーや多焦点ソフトコンタクトレンズ、特殊な光を目に当てるレッドライト治療など。平岡さんによると、瞳孔が開く副作用のため、リジュセアミニは、レッドライト治療との併用はできないが、他の治療なら可能という。
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