近視予防の鍵は「1日2時間の屋外活動」〈窪田良のメディカル・トーク〉

(2025年5月6日付 東京新聞朝刊)
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イラスト・佐藤圭美

台湾では小学生の近視率が減少

 近年の研究で、屋外活動が近視予防に極めて有効であることが明らかになってきました。日光を浴びることで分泌される目の成長に関わるドーパミンや、遠くを見ることには、眼軸(がんじく、目の奥行き)の過度なのびを抑える働きがあるとされています。つまり、日中に外で過ごすことが、子どもの目を守る最も自然で確実な方法なのです。

 台湾では2010年から国を挙げて「1日2時間以上の屋外活動」を推進し、全校で屋外授業や外遊びを行う取り組みを開始しました。その結果、ここ数年で小学生の近視率は減少に転じ、実際に成果が数字として表れてきています。これは世界的にも注目される成功事例です。

 一方で中国でも、「目を守るキャンペーン」として授業の合間に屋外活動を取り入れるなどの施策が全国的に進められています。

 外遊びは、私が子どもの頃に比べて明らかに減っていると感じます。日本でも近視の深刻さがようやく認識されつつありますが、今こそ家庭・学校・行政が連携し、屋外活動を日常に組み込むことが求められています。休み時間を外で過ごしたり、放課後や通学時間を上手に使ったりすれば、外で2時間過ごすことは可能です。

 近視は生活習慣病であるという意識を持って、目に優しい生活を心がけてください。今後もしばらく、近視に関するお話を続けたいと思います。

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窪田良(くぼた・りょう)

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 1966年生まれ、兵庫県出身。眼科医、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO。慶応大医学部を卒業。虎の門病院勤務を経て、米シアトルのワシントン大助教授や慶応大医学部客員教授として活躍。現在は眼科現在は眼科領域で創薬と医療技術の研究開発に取り組む。著書に「近視は病気です」(東洋経済新報社)。本コラムでは、子どもの目が置かれた状況や近視予防対策などの話題を幅広く伝えます。

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