「産後はまるで牢屋だった」空腹の私に、夫が放った信じられない言葉とは 私たちの産後クライシス〈第1章-妻〉
〈こんなはずじゃ…私たちの産後クライシス〉第1章 妻の語り
出産した妻と、その夫。同じ屋根の下、同じ時間を過ごしたはずの2人が語る「現実」は、あまりにも食い違っていた。
2025年7月、東京すくすくに、ある男性から悲痛なコメントが届いた。きっかけは、産後クライシスに関する記事だった。
男性はコメントにこう書いていた。
「うちは、出産後は一見平和で幸せな時間が過ぎていたと思っていたのですが…」
男性は40代の研究職で、6歳の長女を育てている。世に言う「まったく家事育児をしない夫」ではなかったつもりだった。しかし、娘が2~3歳になったころ、妻の感情が突然爆発し、こう言ったという。
「助けてと言っているのに助けてくれなかった」
男性は困惑した。当時を思い出しても、妻は子どもに笑いかけ、幸せそうにしていたイメージしかなかったから。なぜ今になって、妻は「当時のトラウマ」を訴えるのか。自分は何を見落としていたのか…。
妻を待っていた現実とは?
取材に応じた妻(40代、会社員)が語ったのは、夫の記憶とは正反対の「現実」だった。
子どもが生まれたら始まるはずの「幸せな生活」の代わりに、彼女を待っていたのは、社会からの疎外感と無力感。
「悪気はなかった」夫と、「一生許せない」妻。「産後クライシス」という言葉が注目されて10年以上。男性育児が当たり前になりつつある今も、なぜ夫婦は決定的にすれ違うのか――。
4つの章で、妻と夫のそれぞれの「一人語り」を紹介し、考えていきます。
第1章で語られることは…
緊急帝王切開で心身ともに極限状態にあった妻は、「食べるものがない」と訴えても夫に昼食を買ってきてもらえず、絶望感を抱く。一方、夫は妻が幸せそうに見えたと誤解し、産後の苦しみを全く理解できず能天気に振る舞っていた…。まずは妻の語りから。

産後の夫との関係について語る女性
命がけの出産、続いた痛み
産後の生活は、赤ちゃんがいることを除けば、まるで牢屋(ろうや)に閉じ込められ、両手に手錠をかけられ、食事を十分に与えられず、痛みに耐え、睡眠をとらせないといったさまざまな虐待を受けているかのようでした。
それでもまだこの時は、子どもが生まれた喜びと将来への希望が勝っていました。
出産は、陣痛が24時間続きました。腰部に異常な痛みを感じるようになり、私は医師に「このまま普通分娩(ぶんべん)は無理だ」とかすれる声で伝えました。
赤ちゃんのバイタルサイン(生命兆候)が下がったこともあり、緊急帝王切開となりました。子どもを失うかもしれないという恐怖との闘いでしたが、何とか産むことができました。
私は事情があって、親を頼って里帰りすることができませんでしたが、夫は育休を取ると言っていたので安心して自宅に戻りました。
体の中にも外にも大きな傷があり、出血は続いていて、腹筋が切れているのでそもそも自力で起き上がることすらできませんでした。
「自分のこと」すらままならない
でも赤ちゃんが泣くと、頻繁に起き上がらなくてはなりません。ベッドの横の椅子につかまって、必死で起きました。
さらに、母乳という形で血を流し続け、授乳に伴う痛みもある。
抱っこで両手が常にふさがっている。忙しくて食事もろくに取れない。
トイレ、入浴、歯磨きも自由にできない。
産まれる前から寝不足で、寝たいけれど、昼も夜も泣き声で起こされるのでひどい頭痛もありました。
新生児は1カ月外出させられず、自分も起き上がるだけでやっとなので、買い物にも行けません。

長女が元気に育ってくれていることが夫婦の支え
「私の昼食は?」頼みの綱だった夫の言葉
夫は仕事の帰りに、自分も食べる夕食用のお弁当2つと翌朝用のパンは買ってきましたが、翌日用の私の昼食は買ってきてくれませんでした。
私は何度もお願いしました。授乳中なので、栄養のあるものが食べたいと。
夫は「うん、分かったよ」と言い、次の日もその次の日も買ってきませんでした。
食料の調達は夫に頼むのが普通だと思っていたので、退院した後に食べるための冷凍食品などは何も用意していませんでした。
「立ち上がるのもやっとなの」
そう伝えると、おにぎりを1個買ってきてくれた日もあったかもしれません。
それも適当にたくさん買ったうち、余ったからどうぞというくらいだったと思います。
4日目くらいには、「自分の食事くらい自分でなんとかしてよ」と言い始めました。
何を食べていたかは思い出せません。朝用のパンをかじっていたのかもしれません。
「もういいよ、コープ頼む」と言って、自分で冷凍食品を注文しました。赤ちゃんの世話をしながらサービスを調べることは大変でした。やっとのことで契約し、でも食材が届いたのは1週間後です。
日中、空腹と切なさで涙が出ました。
「育休=休み」だと思っているの?
夫は料理が好きで割と作る方でした。子どもが生まれる前は、私が仕事で帰りが遅い日は、夫が作ってくれることもありました。
妊娠してから、私は仕事を早く切り上げるようになったので、食事も毎日作るようになりました。
産休中も体調はよかったので、家事を全てやりました。夫はなぜか、そのまま料理や家事をしなくなりました。
生まれる前は家事育児をすると言っていたのに、生まれても何もしないのは何で。どうしてそんなに傍観者なのと思いました。
私が育休中で「休んでいるから」という感覚だったのかもしれないです。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい











