保育園に早く預けるの、最善だった?〈宮里暁美の子育て相談〉

(2025年12月12日付 東京新聞朝刊)

ひとりで悩まない 宮里暁美の子育て相談

赤ちゃん期間を堪能できなくて悲しい

 昨秋に生まれた娘がいます。1歳ぐらいまで自宅保育をしたかったのですが住んでいる地域は保育園激戦区。色々調べて考え、一番入園しやすいとされる「0歳児クラス4月入園」で申請し、生後5カ月で入園しました。

 幸い第一希望の園に決まり、通ってみるととても良い園で安心しているのですが、経済的な事情を考えても、赤ちゃんを育てるのは娘が最後。仕事に兄弟の世話にと忙しくしていると、ふとしたときに「娘がまた成長している」と気付きます。一生でもわずかな赤ちゃん期間を堪能できず、と悲しい気持ちになります。

 たくさん悩んでの決断ですが、何度も「これが最善だったのか」と思ってしまいます。(30代母親)

イラスト

イラスト・永須華枝

 

子どもの今が「最善」なのです

 私の例です。1人目は1月生まれ。産休を1年間取ってから復帰。遠くの無認可の保育園に1歳児で入園しました。なかなか大変だった経験を経て、2人目は7月生まれ。4月入園に合わせて産休を短めにし、0歳児で入園。2人目は3月末生まれ。保育ママさんに1週間見てもらって1歳児で入園。

 どの時も保育園の入園が決まるまではハラハラドキドキだったことを思い出しました。

 今回の選択に「最善だったのか」と悩まれていますが、子育てにおいて「最善」って何なのでしょうか。「最善」というメガネで見ると、自分の育て方や保育園の選び方の良しあしが気になり、もっと違う選択肢があったのではないか、という思いに悩まされます。

 では「最善」というメガネで見る対象を「お子さんの今」に変えてみます。お子さんは、今、どうしていますか? 寝返りからお座りになり、よく笑う。書ききれないくらいのいとおしさがあふれてくるのでは。それは、今紡がれている大事な「最善」なのです。

 お母さんが悩んだ末に選んだ生活の中で過ごしている、お子さんの姿の中に「最善」が詰まっています。今に目を向ける。共に喜んでいく。そういう姿勢は、子育てでとても大事だと思います。

 私も働きながら子どもを育ててきましたが、少しでも早く帰れた日は、余裕がありました。時間に余裕があることで、心に余裕が生まれます。家に帰ってからの時間は、少しでも長いといいですね。仕事の調整ができるならば、少しでも早く迎えに行って、お嬢さんとのうれしい時間を味わってください。

 歩くスピードを少し緩めて、顔を見つめて笑い合う。それって、そんなに長い時間がなくても、10分でも、心をゆったりさせて過ごすと、すごく長く感じるものです。

 お子さんが「あー」と言ったら、お母さんも「あー」と返します。お子さんが笑ったら、お母さんも笑います。離れていた時間があるからこそ、いとおしく思える。その瞬間を、どうぞ大事に、大事にしてください。お子さんは、きっと健やかに大きくなっていきますから。

(文京区立お茶の水女子大学こども園・前園長、お茶の水女子大学特任教授)

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