孫育てに昔の経験が通用しません〈宮里暁美の子育て相談〉

(2025年6月13日付 東京新聞朝刊)

私のスプーンで食べさせたら「やめて」

 帰省した3歳の孫を散歩に連れ出したら、母親である娘から「日焼けさせないでね」とひと言。私のスプーンで孫に食べさせたら、今度は「口移しはやめて」。子育てに協力したいのですが、昔の経験が今は通用しないのかと戸惑います。(60代祖母、3歳男児)

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イラスト・永須華枝

「他にもあったら教えてね」と聞いてしまおう

 昔は大丈夫だったけれど、今はやめた方がいいと言われていることっていろいろありますよね。「日焼けをさせない」ということもその一つ。私が子どもの頃は、夏休み明けに「誰が一番黒い?」と日焼けを競い合ったものです。しかし今は、子どもの日焼けは大人以上に深刻な健康被害を引き起こす可能性があることが分かってきて、日焼け防止を心がける時代です。「口移しで食べさせる」ことも、むし歯などの病原菌を移してしまうかもしれないと知られ、気をつけるようになりました。

 このように新しく判明することっていっぱいあります。日焼けのことも、口移しで食べさせることも、その一つに過ぎません。だけれども、「それやめて!」と言われると心がキュンとしませんか。小さかった頃の自分が否定されてしまった気分にもなります。

 でも、大丈夫。「ああ、そうなの、昔は大丈夫だったんだよね」と明るく返してください。知らなかっただけなので「ごめん、ごめん」と。そして「他にも気をつけた方がいいことがあったら教えてね」と聞いちゃいます。おばあちゃんたちが最新の子育て情報を知りたがっていると感じられると、娘さんも安心するはずです。お子さんに関わる人たちの間で「大事にする思い」が共通になっていることはとても大切ですから。

 いろいろと変わることもありますし、変わらないこともあります。小さい子どもをいとおしいと思い、大切に接する心持ちは今も昔も変わりません。子育ての主体はお父さんやお母さんですが、仕事との両立で忙しくなっているのが今の子育てです。そんな時だからこそ、おばあちゃんやおじいちゃんの役割は大きいのです。

 「遊んで!」と笑顔で駆け寄ってきたお孫さんを、ぎゅっと抱きしめてください。「愛されて育った」自分のうれしい記憶を、しっかりお孫さんに伝えていってください。

 (文京区立お茶の水女子大学こども園・前園長、お茶の水女子大学特任教授)

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