「おまえパパんとこいけよ」「やだよ」布団の中でママを取り合う<加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!>

(2026年1月7日付 東京新聞朝刊)

写真

 加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!

 うー寒い。新年の寒さも厳しいが、近頃の僕は心が寒い。というのも、冬休み中、朝から妻のベッドが騒がしい。三男、四男が、妻を取り合ってキャハキャハしている。

 うらやましい。取り合いからケンカになる。「おーい。こっちは空いてるぞ」と声をかけた。無視された。「おーい。こっちはテントだぞ。キャンプする人いますか?」。布団を脚で押し上げテントに見立て誘致活動。

写真

 「おまえパパんとこ行けよ」「やだよ」と押し付けあう兄弟。「じゃあ、きょうちゃんおいで」と指名してみた。「やだ。パパ、ウンチだもん」

 もし、うちに女の子がいたら、「パパと結婚する」とか言ってくれるのだろうか? いや、現実はそんなに甘くない、と娘のいる友人から聞く。今となっては、妻は僕が近寄るだけで嫌な顔をする。

 僕はこの先、誰からも求められず、寂しく生きていくしかないのだろうか? いっそ、愛人をつくってはどうか? 自分の経済力、容姿などを総合的かつ客観的に分析してみた。セールスポイントが全く思い浮かばない。

写真

 犬はどうだ? 尻尾をブンブン振って、「パパさーん、お帰りなさーい!」と勢い余っておしっこまで漏らしてくれるかもしれない。しかし、犬まで妻になびいたらどうする?

 もうわかった。相手の好意を期待することに無理があった。これからは自己完結する愛。例えば、趣味。幸い僕には写真がある。寒さなんて忘れるくらい打ち込めばいい。

 「ということで、今年からは、全身全霊で写真に取り組むことにします」と宣言したら、息子たちにはスルーされ、妻はスマホを見ながら「はいはい」と言った。

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

写真

 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。15歳、12歳、8歳、5歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。

0

なるほど!

13

グッときた

0

もやもや...

0

もっと
知りたい

すくすくボイス

この記事の感想をお聞かせください

/1000文字まで

編集チームがチェックの上で公開します。内容によっては非公開としたり、一部を削除したり、明らかな誤字等を修正させていただくことがあります。
投稿内容は、東京すくすくや東京新聞など、中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ