「おれ、私立に行ってもいいの?」長男の言葉に泣けてくる〈加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!〉
長男も気がつけば中3。お察しの通り受験生で、そろそろ志望校を絞り込む時期。うちでは、子どもの勉強関係のことは妻が見てくれている。妻は小学生の頃、塾や習い事を週8個。中学受験をした東京の子ども。それに引き換え僕は、小学校から帰ると暗くなるまで遊び回り、晩ご飯を食べていると、「かーせーくーん」と誘いにくる友だちと銭湯に行き、アイスを食べ、宿題もせずに寝ていた大阪の子ども。
受験でもなにかと頼りになる妻に対して、僕は自分の経験から、「男子校に行くと、後遺症で女の子と自然に会話できなくなるよ」とアドバイスしただけ。ある日、妻が長男に「私立という選択肢もあるんだよ」と言った時だった。「えっ、おれ、私立に行ってもいいの?」と驚いた様子。不安定なフリーランスカメラマンの4兄弟の長男。彼なりに忖度(そんたく)を重ねたかと思うと泣けてくる。
「いらん心配するな。私立でも外国でも行ったらええ。そのために、父ちゃんも母ちゃんも頑張って働いてんねんから」と僕は言った。そうは言ったが正直なところ、うちには子どもが4人もいるし、商いも繁盛してるとは言い難い。
「私立にも行けるんだ」という気持ちを持って、公立に行ってほしい。というのは、「お金ないからラーメン食べた」と、「ステーキ食べられるけど、好きだからラーメン食べた」では、スープの味も麺の喉ごしも変わってくる。と妻に必死になって説明してると、「私立高校も授業料無償化になるんだよ。知らなかった?」って言われた。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。14歳、12歳、8歳、4歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
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