4歳で婚活 計算高い一面もある〈加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!〉
妻に聞いたところ、四男は幼稚園の帰り道に、「たぶん、ななせんせいとけっこんする」と言ったらしい。驚いた。夕食後、食卓の人口が減ったのを見計らって、「なな先生と結婚するの?」とさりげなく聞くと、四男は照れた様子で、「たぶんね」ともう婚約でもしたかのよう。
最近「たぶん」を気に入って使っている四男。多分、なな先生と結婚はできないと思うけど、4歳で婚活とは、早熟な一面がある。僕が初めて結婚を考えたのは、東京に出てきて、写真の仕事も少なく、毎日ふらふらしていた32歳の頃。「あんたお金あんのか?」と電話をくれる母が振り込んでくれるお金で、食べつないでたバカ息子の僕に、なんと、すてきな彼女ができたのだ。あれはまさしく「恋」だった。
頭がバラ色の世界になった僕は、付き合うやいなや、結婚を申し込んだ。しかし、彼女の返事は「貯金あるの?」だった。借金はあったが、貯金はなかった。仕方がないので「お金がなくても結婚できる方法」を思いつくままコピー用紙に何枚も書いて渡した。受け取った彼女は、異様に膨らんだ封筒に恐怖を覚えたらしいが、1年後、結婚してくれた。
今でもたまに「あの時なんで結婚したんだろう?」と妻が遠くを見る。そんな時は、「こんなかわいい子4人も出てきてよかったやん」とフォローしている。後日、四男は、「たぶん、かなちゃんとけっこんする」と言い出した。「ななせんせいは(結婚するのが)むずかしいから、かなちゃんでいいや」ということらしい。計算高い一面もある。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。14歳、12歳、8歳、4歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
なるほど!
グッときた
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