「コウくんが…」中学校から電話 想像をはるかに超えた呼び出し理由〈加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!〉

(2025年11月5日付 東京新聞朝刊)

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 加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!

 「イチゴのかるたが食べたい」と四男。さては「イチゴタルト」って言いたいんだな、かわいい奴め。すると、三男したり顔でやってきて「ちがうよ。イチゴカルトだよ」と諭すように言った。そんな教団があるなら入ってみたい。

 携帯に中学校から着信アリ。いろんな可能性が頭をよぎる。「コウくん(次男)がヘビにかまれまして、迎えに来ていただきたいのですが…」

 想像をはるかに超えた電話だった。どうせまた、友だちの前で調子に乗っていたに違いない。さぞ、ヘビも迷惑だったろう。

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 「あの、毒ヘビでしょうか?」。まだ仕事を続けていたかった僕が聞くと「コウくんいわく、毒ヘビではないということですが…」。保健室の先生の声のトーンには「めんどくさい父親だな、早く迎えにこいよ」という感じがあった。

 保健室でふてくされていた次男を車に乗せ走り出す。「アオダイショウだから大丈夫だって言ってるのに、なんで帰んなきゃいけないんだよ」とバックシートで泣き出した。

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 「じゃあ、病院行って、そのあと学校まで送ろうか?」と提案すると「いや、病院も学校も行かなくていい。もう家でダラダラするって決めたから」。涙はとうに乾いていた。

 さらに「映画でさ、拳銃で撃たれた人がさ、『しゃべるな、傷口が開いて死ぬぞ』って言われてるのに、いつもしゃべり続けて死ぬじゃん。もし、しゃべらなかったら死ななかったのかな?」と、どうでもいいことを聞いてきた。こいつ、帰って映画を見るつもりだ。

 その夜、ヘビにかまれたところが少し腫れただけなのに、次男はかなりびびっていた。

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

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 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。15歳、12歳、8歳、5歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。

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