子育ては「完璧じゃなくていいんだよ」 子どもと離れてほっとしてほしい 臨床心理士が運営する当日予約OKの一時保育

北條香子 (2026年1月19日付 東京新聞朝刊)
 子育て世代が多く住む川崎市中原区で、一時預かり保育「いいんだよHOME」と親子サロン「いいんだよひろば」を運営する臨床心理士・公認心理師の須山智子さん(45)。HOMEでは昨年10月、国が進める「こども誰でも通園制度」の受け入れも始めた。活動の根底には、娘2人を育てる中で、言いようのない不安や苦しみに直面した経験がある。
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須山智子さん=川崎市中原区で

自分はずっとイライラしていたから

 「出産後数年間、ずっと苦しくて、しんどくて、イライラしていた」。子どもはかわいく、経済的な問題もない。臨床心理士の仕事にもやりがいを感じていた。「はたから見れば順風満帆なのに、何がどうして苦しかったのか」。当時の気持ちは、今でも説明が難しいという。

 自身は「人に迷惑をかけず、ちゃんとしなさい」と厳しく育てられた。真面目な性格で「頑張ればうまくいく」と思って生きてきた。だがその“法則”は、子育てには必ずしも当てはまらない。

 「いいお母さんになりたい、いい子育てをしたいのに現実は違うと絶望して。なんでこうなっちゃったんだろうと、夫や子どもにも当たり散らして、必死で毎日を回していた」。弱い自分をさらけ出せるママ友に甘えて子どもを預け、一人の時間を持つなどする中で少しずつ、子育ても仕事も、完璧にできない自分を受け入れられるようになったという。

 2021年から川崎市の児童家庭支援センターに非常勤の相談員として勤務。コロナ禍で遠方の祖父母に来てもらえず、子育ての負担を抱え込んだ母親が多かった。電話相談を受けていても、受話器越しに子どもの激しい泣き声が聞こえた。「子どもと離れてゆっくりする時間を取れたら、お母さんも元気になれるのに」とかつての自分を重ね合わせた。

「もう無理」と思ったらすぐに預けて

 だが従来の一時保育は受け入れ枠が少ない上に、事前申請や面接が必要など、使い勝手が悪いと感じた。「カウンセリングだけでは、大変な親を一人も救えない」と思い、社会課題を解決するソーシャルビジネス(社会的企業)に行き着いた。2024年7月に開設した「いいんだよHOME」では、当日の予約でも、どんな理由でも子どもを預かる。「親が『もう無理』と思ったら、1時間後に子どもを預けて、ホッとひと息つける時間を提供したい」

 「いいんだよ」は、須山さんにとって「つらかったときに言ってほしかった言葉」だという。一人で頑張らなくていいんだよ、完璧じゃなくていいんだよ─。その温かな思いを、利用者に届け続ける。

こども誰でも通園制度 

 保護者の育児負担や孤独感の軽減を図るとともに、他の子どもとの関わりを通じて子どもの発達を促す狙いで、2024年度から一部自治体で試験的に始まった。2026年度から全国で本格実施される。普段は保育所などに通っていない生後6カ月~3歳未満の子どもを、保育所などに月10時間まで預けられる。利用の理由は問わず、料金は施設によるが1時間300円程度。

元記事:東京新聞デジタル 2026年1月19日

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