ベビーフードの防災備蓄はなぜ難しいのか 家庭で壁になる「対象期間が短いがゆえの食品ロス」 自治体はどう考える?

(2026年3月6日付 東京新聞朝刊に加筆)
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なかなか進まない自治体によるベビーフードの防災備蓄

防災バッグの中身は…使えない

 3月のこの時期になると毎年、家庭の防災バッグの中身をチェックします。子どもが幼い頃は、そのたびにサイズが小さくなって使えない服やおむつが出てきて、「このまま被災していたら…」と反省を繰り返していました。

 子どものものは、成長が早いのですぐに使えなくなってしまう。そこに「不便さ」「もったいなさ」という壁があると感じています。

 先月、ベビーフードの生産・販売について、食品メーカーに取材した際に、同じ壁に出合い、ハッとしました。「生後5カ月、7カ月、9カ月…と、成長に合わせて食品の大きさや硬さが変わるので、一人の子が一つの商品を食べられる期間は非常に短い」。多品種を少数ずつ生産する必要があり、製造効率が決して高くないことを説明するための担当者の言葉でしたが、似たような説明を、東京都や都内の自治体への取材でも耳にしました。

「大人用のもので代替」を想定

 ベビーフードの防災備蓄について東京都に尋ねると、「おむつや液体・粉ミルクの備えはあるが、ベビーフードは備蓄していない」。都総務局総合防災部の東寛久・計画調整担当課長は備蓄しない理由を「ベビーフードは少量多品種で(対象となる)人数も少ないため」と説明。自治体向けの避難所運営ガイドラインを出している都福祉局子供・子育て支援部の砂賀満帆・事業連携担当課長も「月齢ごとにそろえるのは現実的ではなく、食品ロスにもつながるため。おかゆなど大人用のもので代替することを想定している」と回答しました。

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東京都など一部の自治体は、大手スーパーなどの物販事業者と、災害時などに離乳食を調達・提供してもらう協定を結んでいる

 実際に避難所を運営する市区町村も備蓄状況は同じです。内閣府の調査によると、2022年時点で離乳食を備蓄していた自治体は、全市区町村の14.3%にとどまります。都内のある区の職員は「東京都や住民からはさまざまなリクエストがあるが、スペースの事情もあり、全てに応えるのは難しい」と打ち明けます。

自治体規模なら仕組みがつくれる

 自治体によるベビーフードの備蓄の壁になっている事情は、子育て家庭やメーカーが抱える悩みと一緒なのだな…と納得しかけたのですが、いやいや。各家庭において、子どもがどんどん成長してしまうがゆえに、ベビーフードの備蓄が難しいのは分かります。でも、自治体においては、対象となる子どもは次々に入れ替わって存在するはずです。食品ロスに関しても、子ども食堂や子育て家庭へ提供する仕組みを整えれば、いくらでも解決のしようがあるのではないでしょうか。

 避難所生活が長引いた能登半島地震では、離乳食の備蓄の必要性に光が当たりました。都内では、世田谷区など備蓄の見直しを予定する自治体もあります。多くの子どもを対象とする自治体だからこそ、現状からさらに一歩踏み込んだ備えが可能なはずです。

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