高市政権が検討している「旧姓単記」は「選択的夫婦別姓」とどう違うの? 不都合は解決できる?〈Q&A〉

木谷孝洋
 政府の第6次男女共同参画基本計画が3月13日、閣議決定されました。結婚前の旧姓(旧氏)の通称使用拡大に向け、公的書類に旧姓だけを記載する「単記」も可能とする法制化を検討すると明記。高市早苗首相の意向が強く反映された形です。

 「旧姓単記」とはどんなもので、夫婦が望む場合に結婚後もそれぞれ結婚前の姓を使うことができる「選択的夫婦別姓」とは何が違うのでしょうか。論点をまとめました。

表:「旧姓単記」選択的夫婦別姓とどう違う?

一部の書類で旧姓の単独使用が可能に

─旧姓単記とはどういうことでしょうか。

 結婚時に姓を変えた人が、結婚前の姓を通称として使い続けることを「旧姓の通称使用」と言います。運転免許証などの身分証明書では現在、この旧姓と戸籍姓を併記する形で認められていますが、旧姓だけを記載する「単記」は認められていません。今回の指示は、これを一歩進めて単独使用を可能にしようとするものです。

─どういう場面で旧姓単記が可能になるのでしょうか。

 まだ具体的な制度は明らかになっていません。ただ、高市首相は3月2日の衆院予算委員会で、厳格な本人確認に用いられるパスポートや免許証、マイナンバーカードなどでは、引き続き旧姓との併記にすることも検討すると述べました。全ての書類で旧姓単記が認められるわけではなさそうです。

─旧姓単記のメリットとデメリットは。

 結婚時に姓を変えるのは、ほとんどが女性です。旧姓単記が可能となり、その根拠が法律にできれば、旧姓を使える範囲が広がることが期待されます。

 一方で、戸籍上の氏名と通称での氏名の二つの法的な名前を持つことになり、本人確認で混乱が生じることや、マネーロンダリング(資金洗浄)などでの悪用のリスクが指摘されています。

写真

衆院予算委の締めくくり質疑で答弁のため挙手する高市首相。左は片山財務相=13日、佐藤哲紀撮影

保守派と夫婦別姓を望む人、双方から批判

─旧姓単記の議論は突然出てきた印象ですが。

 実はそうではありません。氏を巡る問題を議論してきた自民党のワーキングチームが2025年6月にまとめた報告書には、「旧氏の単独使用を可能とする法制化を含めた基盤整備の検討を進める」との文言が盛り込まれました。日本維新の会も、昨年5月に旧姓単記を可能とする法案を提出しています。高市政権での旧姓単記の検討は、こうした流れの延長線上にあります。

─世論の反応は。

 戸籍や家族の一体感を重視する保守派からは、反発の声も上がっています。旧姓の単記使用が幅広く認められれば、夫婦が別の姓を名乗る夫婦別姓に近づくと考えられているためです。

 一方、選択的夫婦別姓制度を望む人たちからは、自分の名前を名乗り続けるアイデンティティーの問題は解消されないという批判があります。海外では旧姓が理解されづらいとの課題も指摘されています。

元記事:東京新聞デジタル 2026年3月14日

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