わるくちをいうひとは ともだちではありません スウェーデン発「LLブック」 障害者がだまされないために
「知人を全員友だちだと思ってしまい、だまされる」
「知り合いが全員友だちというわけではないことを伝える本を作ってほしい」
児童文学評論家の赤木かん子さんは昨春、知的障害のある子を持つ母親に頼まれた。LLブックを作るに当たり、どんな本が必要かを尋ねた時だった。知的障害者は複雑な人間関係を捉えるのが苦手で、知人を全て友だちだと思ってしまい、だまされることも多いと教えられ、衝撃を受けた。
2016年施行の障害者差別解消法は、障害者への「合理的配慮」を行政などに義務づけている。LLブックは情報面での配慮として有効だが、これまであまり広まらなかった。法施行後、赤木さんは大活字本など障害者向けの本を出版している社会福祉法人「埼玉福祉会」(同県新座市)から製作の協力を依頼された。
やりとりに潜む悪意や差別 わかりやすく伝える
「交通系ICカードを貸してと言われて渡したら、チャージしてあった金額を全部使われ、帰りに駅の改札を通れずパニックになったという話も聞いた」と赤木さん。こうしてできたのが、昨秋発売の「ともだちって どんなひと?」だ。
日常的なやりとりの中で、障害者が親切や好意と受け止めていても、相手に悪意や差別がある可能性などを、シンプルな挿絵と、文章を短く区切った「分かち書き」で伝える。「わるくちをいうひとは ともだちでは ありません」と具体的に説明し、最後に「あなたの ともだちは だれですか?」と問いかける。
自らも障害のある挿絵画家「人付き合いのヒントに」
挿絵は、自らもディスレクシア(読み書きの障害)や広汎性発達障害など複数の障害がある画家の浜口瑛士(えいし)さん(16)=東京都世田谷区=が手がけた。小学校の6年間、1人も友だちがいなかったという浜口さん。「みんなは自然に友だちができるが、私は人との距離をつかめなかった。この本は人付き合いのヒントになる」と話す。
浜口さんは書くことは苦手でも読むことは得意で、読書が心の支えだった。だが、多くの障害者は読み書きの問題で本から離れてしまうといい「文字が苦手でも読める本は素晴らしい」と話す。
赤木さんは「LLブックは障害者が知識を深めて、自分でさまざまな判断をすることへの手助けになる。多くの人に知ってほしい」と話している。
LLブックとは
1968年にスウェーデンで誕生。「LL」はスウェーデン語で「やさしく読める」の意味の略語で、言語の壁がある移民や障害者らのために作られた。赤木さんらはこれまで、虐待を受けた主人公が自立するまでを描いた「ぼくの家はかえで荘」や、体を清潔に保つ大切さや化粧の方法を伝える「美しくなりたい あなたへ」(スウェーデン語版から翻訳)など10冊を出版している。問い合わせは、埼玉福祉会=電話048(481)2188=へ。
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