AIで児童虐待に対応 過去データ元に一時保護の必要性などを提示
宮本隆康 (2019年5月29日付 東京新聞朝刊)
産業技術総合研究所(本部・茨城県つくば市)は28日、人工知能(AI)による児童相談所の児童虐待対応の支援システムを開発した、と発表した。過去のデータなどを基に、一時保護する必要性などをAIが示し、児童相談所の判断の参考にしてもらう。データを提供した三重県が、6月下旬から国内で初めて試験導入する。
4歳児が保護訴えたら「99%」頭や腹部のあざは「67%」
産総研によると、開発したアプリを入れたタブレット端末に、子どもの年齢や性別などの基本項目と、傷の有無など19個の評価項目を打ち込む。
AIが過去のデータを基に評価項目で判定し、一時保護の必要性の確率が表示される。4歳児が自ら保護を訴えていれば「99%」、頭や腹部などにあざがある場合は「67%」などと示される。
似た事例で一時保護をした場合と、在宅のまま指導した場合で、児相が対応を要した日数の違いも表示する。
三重県で独自に導入 一時保護で再び虐待する確率が低下
三重県内の2カ所の児相などで来年2月まで、計20台のタブレット端末を使い、実用性を試す。
三重県は2014年度から、一時保護の判断に独自の約20の評価項目を用いている。過去のデータを分析すると、虐待の可能性が同程度の場合、一時保護をした方が、再び虐待をする確率が低いことが分かった。傷が頭周辺の場合、再虐待の比率が高い傾向も出ていた。
児相の人手不足や経験不足の職員を補うことを期待
過去のデータが一時保護などの判断に役立つことから、過去6年間に対応した約6000件分を産総研に提供し、AIに反映させた。
産総研人工知能研究センターの高岡昂太(こうた)研究員は「人が最終的に判断するのは変わらないが、そのための情報提供を支援したい。経験の浅い若手職員の育成支援にもなる」と話した。
三重県子ども・福祉部の中山恵里子次長は「全国で児相は業務量に人員が足らないうえ、新人は現場で悩んでいる。判断時間の短縮など、課題解決に強く期待している」と語った。
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