どうなる?10月からの幼保無償化 先行自治体では「働きたい」母親たちの支えに 一方で課題も

長田真由美 (2019年9月19日付 東京新聞朝刊)
 10月から幼稚園や保育所などの利用料が無料になる(幼保無償化)。消費税の増収分を活用する国の政策で、子育て世帯の負担軽減が期待される一方、保育施設に入りたくても入れない待機児童問題や、保育士不足が悪化する懸念もある。無償化で保育所や幼稚園はどう変わり、保護者が安心して預けられるようにするにはどうしたらいいのか。模索する現場を訪ねた。

無償化を受けて開設された小規模保育所「Fineひまわり保育園」=大阪府守口市で

母親「保育料分を教育費として貯蓄したい」

 木のぬくもりに包まれた保育室。「おはようございます」と園児たちの元気なあいさつが響く。大阪府守口市中心部のマンション1階にある小規模の認可保育所「Fineひまわり保育園」。市内の社会福祉法人が昨年4月に開設し、ゼロ~2歳の21人が通う。利用料は皆、無料だ。

 「保育料分を子どもの教育費として貯蓄したい」。4月から娘を預けるパートの内山田香さん(32)は笑顔を見せる。専業主婦だったが、保育園が無料なことにも背中を押され、働くことに。2歳の息子を通わせる町田美奈さん(31)は「駅が近く、勤務先にも行きやすい」。

無償化予算6億7000万円は「再編」で捻出

 保護者の収入などで決まる認可保育所の保育料は1人当たり全国平均3万7000円。子育て世帯の負担は小さくない。大阪市に隣接する守口市は人口減少が進む中、子育て世代を呼び込もうと2017年に、独自に幼保無償化に踏み切った。

 対象は市内のゼロ~5歳児。世帯の所得に関係なく、市外も含め市民が預ける認可の保育所や幼稚園、認定こども園の利用料を市が負担している。

 年間の予算は6億7000万円ほど。財源は公立の保育園と幼稚園の再編で捻出した。16園から半分に減らし、残った8園のうち5園を民間に移管。職員数や施設の維持管理費を削減した。

小規模保育所を増やして受け皿づくり

 一方で、受け皿づくりも進めた。希望者が増えることを見据え、幼稚園を保育機能のある認定こども園に。無償化を呼び水に、民間事業者に小規模保育所の新設を呼び掛けた結果、17年から3年間で市内に新たに16施設ができた。受け入れ枠は、無償化前より279人増えた。

 Fineひまわり保育園もその1つ。海老名ゆりえ園長(26)は「保育園に入りたいのに入れないという声は以前からあった。市民のニーズに応え、地域へ貢献したいと考えた」と話す。

市「潜在的な保育需要を掘り起こせた」

 効果は如実に表れた。減り続けていた市内のゼロ~5歳児は15年から4年間で300人増加。無償化前の16年に17人だった待機児童は昨年4月に48人に増えたが、受け入れ施設も増え、ことし4月にゼロとなった。

 市が昨年12月に市内の子育て世帯を対象に行ったアンケートでは、協力した525世帯のうち121世帯が無償化前後で「就労状況に変化があった」と回答。うち79世帯は「新たに働きだした」「長時間働きだした」「求職中」と答えた。市の担当者は「働きたいけど子どもの預け先がなく、あきらめていた潜在的な保育の需要を掘り起こせた」と分析する。

「第1志望」問題、慢性的な保育士不足

 ただ、新たな問題も。息子2人を市内の認定こども園に、娘をこども園から離れた保育所に預けている女性(29)は「送迎が大変」とこぼす。娘も同じこども園に預けたかったが、希望者が多く、かなわなかった。「無償化後に市外からの入居者が増え、第1希望の施設に入れないという声を聞く。他の自治体でも無償化が始まるから、少しは良くなると思うけど…」

 また、市内の保育所などは慢性的な保育士不足で、市は、保育所などが保育士を募る就職フェアの出展費や人材育成研修の参加費などを補助する新事業も始めた。担当者は「多方向から支援したい」と力を込める。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年9月19日

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