広がる「ジョブリターン」 退職した元社員を再雇用→双方にメリット!
結婚で退職、2年後復帰 身分もやりがいも
大同生命保険で働く中森藍子(あゆこ)さん(33)は都内の支社で営業を担当する。一度退職したが、社内のジョブリターン制度を利用し復帰した。
中森さんは2006年、転勤のない地域限定の正社員として入社。地元の大阪市内の支社に配属され、営業担当になった。10年に結婚。夫は東京で働いており、同居のためにその年に退職した。
都内の別会社で事務をしていた中森さんに、大同生命から封書が届いたのが12年。都内の営業担当に空きができ、ジョブリターン制度を利用し、また働かないかという誘いだった。
営業の仕事にやりがいを感じていた中森さんは即、会社に連絡を入れ、採用された。身分は正社員。退職時の処遇が引き継がれ、給与面にも反映されている。
中森さんは「ブランクがあり不安だったが、もともと働いていた会社。同期や先輩もいて何でも相談できて働きやすい」と話す。
会社側「期待する成果が出せる即戦力」
同社が制度を導入したのは11年。この制度を利用し、退職した女性29人が復職した。勤続1年以上で、退職理由が結婚、育児、介護、配偶者の転勤の場合に利用できる。また本人が転職や留学で退職した場合も対象となる。年齢制限はない。
現在は事前登録制で登録した元社員にメールなどで募集を通知する。条件が合えば元社員が会社に連絡、双方が合意すれば雇用契約を結ぶ。
同社の人事担当者は「元社員ならどんな人か把握できていて、期待する成果を出してくれる。会社のことや業務内容もよく知っており即戦力」と歓迎する。
優秀な女性の退職は、企業の大きな損失
企業の再雇用制度は、育児休業制度が一般的ではなかった1970年代には、女性の活用策として一部の企業で採用されてきた。育児休業制度の定着で役目を終えるという意見もあったが、育児休業期間中に復帰できず、退職せざるを得なかった人をカバーできる制度として広がってきた。「カムバック制度」と呼ぶ企業もある。
厚生労働省の雇用均等基本調査によると、育児、介護などで退職した人を再び雇い入れる再雇用制度がある事業所の割合は、08年度の29.9%から11年度の53.1%に伸びている。
人件費抑制を図る企業は余剰人員を抱えることを嫌う。常に人手が少ない傾向にある中で、企業風土を知る元社員に戻ってきてほしいと考える企業は多い。働く側も経験を生かし、慣れ親しんだ会社に戻れるメリットは大きい。
注意したいのは、制度があっても、元社員が必ず雇用されると決まっているわけではないこと。正規・非正規など雇用形態や、退職前の勤続年数の扱いなど条件も企業ごとに異なる。
女性労働に詳しい学習院大の脇坂明教授(労働経済学)は「職場の中心的な役割を担うようになった優秀な女性の退職は企業にとって大きな損失。多様な事情を抱えながら働く女性が増えているのだから、企業も多様な制度を整えざるを得なくなっている」と話している。
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