〈アディショナルタイム〉幼稚園児がもう日本代表候補! 卓球「U-7」強化合宿に見るプレ・ゴールデンエージの育て方

谷野哲郎

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 スポーツの世界では、高校生以下のU-18、中学生以下のU-15というように、年代別の日本代表があるのですが、卓球界には幼稚園児と小学1年生の日本代表候補がいるといったら、驚きますか? 今回はそんなかわいくて強い卓球のU-7(7歳以下)強化合宿を取材しました。

世界ランキング上位が低年齢化

 「チョレイ!」「ヤァーー」。室内に子どもたちの大きな声が響き渡ります。11月15日、静岡県磐田市の磐田卓球場ラリーナで行われたU-7卓球選手の強化合宿。全国から集められた幼稚園児から小学校1年生までの男児、女児合わせて22人が元気に動き回りました。


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 このU-7の強化合宿は昨年に引き続き、今回で2度目。一般財団法人KODAMA国際教育財団と日本卓球協会が協力し、未来のメダリスト輩出を目指して開かれました。小学1年生以下の強化合宿というのはかなり珍しいのですが、卓球界では世界ランキング上位選手の低年齢化が進んでおり、その波に乗り遅れないよう、動き始めたのだそうです。

 冒頭に日本協会・宮崎義仁強化本部長が「みんな、将来、日の丸を背負って世界で戦うためにどうしたらいいのかを考えてくださいね」とあいさつ。子どもを怖がらせないよう優しく話すのはU-7ならではの光景。続けて、「それには勝ち負けだけではありませんよ。しっかりとあいさつできるか。ユニホームを自分でたためるか。負けてもラケットを投げたりしてはいけません。この人すごいな、自分より強い人だなと思って握手をしてください」と心得を説くと、見守る保護者も一様にうなずいていました。

緊張をほぐすダンスにも狙いが

 さて、あいさつが終わったところで実技を開始。まずはダンスで緊張をほぐします。踊るのは、人気ダンスユニット・EXILEのTETSUYA氏が監修したオリジナルダンス。あれ、中にはかなりアップテンポな曲が。何で、こんなにリズムが速いのだろう?

 実はピッチ185を取り入れているからでした。卓球では1分間にどれだけ高速ラリーができるかというギネス記録があり、伊藤美誠選手の180回が最多記録。これをピッチ180と呼ぶそうです。ちなみに伊藤選手の前は福原愛さんが175回の記録を持っていました。

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 「今回は子どもたちが伊藤選手を超えられるように(1分間)185回のリズムで踊れる曲になっています」と宮崎本部長。体格で劣る日本人が世界で戦うには速さで勝負ということでしょう。これならダンスをしながらテンポを体に刻めます。子どもたちは歓声をあげながら、リズムよく踊っていました。

五輪でメダル取る子は2歳から

 続いて、いよいよトレーニングと試合を開始。ラケットを振る子どもたちのしぐさは年相応なのですが、随所で鋭い回転をかけたり、素早く打ち返したり、7歳以下とは思えないスーパープレーを繰り出します。男子の松下雄二監督は「五輪でメダルを取るような子は2歳くらいから始めてます。この子たちのキャリアはもう4、5年ありますから」と笑顔。宮崎本部長は「経験者じゃない人は大人でもかなわないかも。部活なら中学2年生と同じレベルくらいですよ」。

 試合に負けると泣いてしまう子がいるのも、この年代の特徴でしょうか。一方で、感心することもありました。それは卓球ノートを付けている子が多いこと。試合後すぐにノートを開き、気付いたことや指摘されたことを書き込みます。平仮名で一生懸命に書き込む姿が愛らしい。それでも、小さいころから自分と向き合っている子は強くなるのだなと感じました。

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この時期だから、伸ばせるもの

 最後に子どもたちに話を聞きました。京都から来た松島美空(みく)ちゃん(幼稚園)は「楽しかった」。卓球を始めたのは2歳からだそうで、「(将来の夢は)オリンピックで1位になること」。また、群馬から来た原澤駿太くん(小1)は毎日3時間ほど練習をしていると言い、「全国大会で優勝したい。張本選手みたいになりたい」。2人は合宿中に行われたリーグ戦で優勝し、来季の12歳以下の日本代表、ホープスナショナルチーム入りを果たしました。

 「ゴールデンエージ」という言葉をご存じですか。諸説ありますが、一般的には9~12歳くらいまでの、さまざまな物事を短時間で習得することができる年代を指します。その一つ前の年代は「プレ・ゴールデンエージ」と呼ばれ、神経系の発達が著しく、こちらも重要な時期だと言われています。この年代だからこそ、伸ばしてあげられるものがあるようです。

 松下監督は言いました。「できるだけ早い時期から何かに取り組むことは大事だと思います。子どもたちの才能はすごいものがありますから。でも、将来のメダリストを目指すには保護者の理解や協力が絶対に必要。子どもが強くなるのと同時に親御さんも一緒に成長していってもらいたいですね」

「アディショナルタイム」とは、サッカーの前後半で設けられる追加タイムのこと。スポーツ取材歴30年の筆者が「親子の会話のヒント」になるようなスポーツの話題、お薦めの書籍などをつづります。
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