<記者の視点>小泉環境相の育休取得は「言い出せない男性」の背中を押す好機になる

(2020年2月22日付 東京新聞朝刊)
 第1子の誕生に伴い、育休取得に踏み切った小泉進次郎環境相。男性の育休取得が進まない中、男性閣僚の育休宣言と取得をどうとらえるべきか、考えました。
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坂田奈央記者

7人の経営者の「ざんげ動画」100万回再生

 長時間労働が当たり前の時代に働き、結果を出してきた7人の経営者が、自身の働き方を振り返り、家族へのざんげを交えながら、育休取得を呼びかける動画がある。

 「いつ『パパ』と呼ばれたのか記憶にない」

 「仕事のことしかほぼ頭にない状態だった」

 「未来を見つめて、自分で働き方を考えてほしい」

 これらの発言は、働き方改革を支援するコンサルティング会社「ワーク・ライフバランス」などが、昨年末に動画投稿サイトYouTubeに公開した「男性育休応援動画」の一幕だ。

 出演者はアイシン精機や敷島製パンなど7社のトップ。いずれも男性社員の育休取得100%を目標に掲げる。動画は拡散され、ワーク・ライフバランス社によると、2カ月弱で100万回近く再生された。

当たり前になるか、一過性か みんなが注目

 その背景にあるのが、小泉進次郎環境相による育休の宣言と取得だ。同社によると、ツイッターでリツイートしたのは30代男性が中心だ。

 小泉氏に育休取得を助言した1人の小室淑恵社長は「大臣の育休取得によって、育休が当たり前のように取れる制度になるのか、一過性のムーブメントで終わるのかを、じっと見守っている一般層が多くいる」と分析する。

昨年8月、首相官邸で安倍首相への結婚報告後、取材に応じる小泉環境相(左)と滝川クリステルさん

 厚生労働省の調査では、男性の育休取得率は民間が6%にとどまり、男性が育休を取りにくい日本の職場の空気が指摘されている。動画の拡散は、育休を取りたくても言い出せない男性が、大勢いることの反映だろう。

 その中で、小泉氏の存在は男性が育休取得を言い出せない社会に一つの風穴をあけ、新しい空気を少しずつ吹き込んでいるように見える。

もし、小泉氏が悩んだ末に断念していたら…

 昨年8月の結婚発表後に育休取得の検討を表明し、翌9月に環境相に就任した当初は賛否両論が渦巻いた。「大臣にも育休は必要だ。民間へのメッセージにもなる」と賛同する閣僚経験者がいた一方、「大臣が育休なんてあり得ない」という批判を浴びた。自身に近い議員も「仕事で結果を出すのが先」と反対した。

 小泉氏は「とても悩んだ」末に、先月に育休取得を宣言し「空気を変えていかなければ、取得する公務員も増えていかない」と強調した。今月17日には、長男誕生後の約1カ月で12日分の育休を取ったことを省内で報告し、管理職に育休を取りやすい職場環境の整備を求めた。

 もし、小泉氏が悩んだ末に取得を断念していたら、男性職員が育休をためらう風潮をさらに助長していただろう。

 小室氏は「子供が生まれる年の男性が大臣になるチャンスはおそらく来ない。千載一遇のチャンスを法改正につなげられるかどうかだ」と指摘する。自民党の男性育休プロジェクトチームは今春、育児・介護休業法の改正も視野に取得しやすい環境設計などの提言をまとめる。好機を生かせる道筋をつけてほしい。

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  • 匿名 says:

    議員や首長になったら人間的な営みは全て止めなければならない、そんな風潮はとても恐ろしい。そんな人達が作った法律ややる行政は、とても生きづらい社会しか作らないと思う。今の日本がその結果なのではないか。

    小泉氏の育休が速やかな社会変革につながることを切に願う。

      
  • 匿名 says:

    男性の育休取得の一番の目的は、育児がどれほど大変なのかを体感することで、そのためには最低1ヶ月ぐらい、小泉大臣にも取って欲しかった。しかし、男性の育休に対する世の中の空気を変える大きなきっかけになったのは間違いない。これからも子育てを楽しんで欲しい。(双子を育てた父親より)

      

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